新築だってご用心 住まいをむしばむ「夏型結露」を防ぐには

新築住宅をイメージした写真

ポカポカの室内の窓に付いた水滴――。

「結露」といえばこんな冬場をイメージするかもしれないが、専門家によると近年、「夏型結露」によるカビなどの被害リスクが高まっているという。

冬の結露と違って目に付きにくい夏の結露は、気付くのが遅れて家に深刻なダメージを及ぼす可能性もある。

何に気をつければ防げるのだろうか。

湿気を含んだ暖かい空気が冷やされると、水蒸気が水に変わる。

小学生で習う「結露」の仕組みだが、おなじみなのは、冬場に室内の暖かい空気が、外気で冷やされた窓などに触れて生じる結露だろう。

夏場は、屋外と室内の温度の関係が冬場と逆転する。

積水ハウス総合住宅研究所の梅野徹也さんによると、この逆転を生じさせて夏型結露を生み出す原因となるのが冷房だ。

湿った暖かい外気が、冷房によって冷やされた家の壁や天井に触れることで夏型結露が生じる。

住宅の壁や天井の内部には断熱材があり、断熱材の室内側には水分を通さないフィルムなどでできた防湿材が設けられるのが一般的だ。

梅野さんによると、この防湿材に結露が生じてカビが発生する。

「問題視されてきたのは冬場の結露で、夏場は対策をしなくてもリスクは小さいと考えられてきました」

ところが、近年になって二つの要因が夏型結露のリスクを増大させているという。

一つは、夏場の平均気温の上昇に伴う外気の高湿化が招く、露点温度の上昇だ。

「東京の8月の平均露点温度は、1990年の約20度から2020年には24度程度にまで上がっています。外気の湿気が増えることで、露点温度が上がり、結露が起きやすくなっているのです」

梅野さんが指摘する露点温度とは、大気中の水蒸気が凝結を始める温度のことを指す。露点温度が高くなると、あまり低温ではなくても結露が発生するようになる。

そして、もう一つの要因が冷房だ。

夏場の記録的な暑さの影響で、積極的に利用が呼び掛けられるようになり、冷房がほぼつけっぱなしの状態になっている家庭もあるだろう。

「壁や天井が屋内から露点温度に達するまで冷やされることが、夏型結露の原因となっています」

環境の変化と住み手側の変化が組み合わさることで夏型結露のリスクが高まっており、新築の家も例外ではないという。

夏型結露が厄介なのは、壁や屋根の内面に起きるために目につきにくく、気づかぬうちに住宅の劣化を早める可能性があることだ。

愛知県半田市の屋根メーカー「神清」で住宅の結露の調査や研究を手掛けてきた神谷昭範・常務取締役(56)によると、カビや木材の腐食で壁の修繕をする場合、内壁を一度解体するといった修理が必要になり、数十万円の費用がかかる場合もある。

「雨漏りと違い、結露による被害は住宅瑕疵(かし)担保責任保険の対象に入らないことが一般的で、修理費用は住み手側の負担となることがあります。家を建てたり購入したりする前から、夏型結露のことを知ることが大切です」

対策は「エアコン」の使い方を工夫することだ。

重要なのは「室内を冷やし過ぎないこと」と解説する神谷さんによると、冷房の設定温度を高めにすることでリスクを軽減できる。

「結露が起きる可能性はありますが、結露が起きても水滴がたまるほどにならなければほとんど問題はありません」

また、梅野さんは、冷房の連続使用時間の短縮や「風向き」もポイントになると説明する。

冷房が常時ついていたり、壁などに風が当たりつづける風向きになっていると結露が起きやすくなる。

冷房の使用方法に加えて、梅野さんがもうひとつ提案するのがエアコンの「除湿(ドライ)」機能の活用だ。

防湿材の外側が結露するため、一見すると除湿は無関係にも思える。

だが、湿度が高いとより不快に感じるため、冷房の温度を下げてしまいがちだ。

そこで除湿の出番だ。

室内の温度を冷やしすぎずに済み、効果が表れる。

また、冬場の結露対策では換気して湿気を外に出すことが重視されるが、夏場はむしろ暑くて湿気を含んだ空気が入り込むことになり、結果的に冷房を強めることにつながる。

冷房と除湿をうまく使うことが、個人でできる唯一の夏型結露対策のようだ。

参照元:Yahoo!ニュース