新米ピンチ 天敵イネカメムシ暑さで急増「空っぽの稲穂に」 コメ3週連続値下がりも

スーパーのコメの平均価格は税込み4176円となり、3週連続の値下がりだ。
17日は各地で猛暑日が予想されているが、暑さに強い害虫が急増していてコメ作りに影響が出ている。
セブン-イレブンでは、17日午前7時から10袋の備蓄米の販売が開始。
販売開始10分で4袋という速さで売れていった。
購入者(70代)「今か今かと待ってたから、ニュースでいつもやっているし、身近なスーパー行ってもないから。たまたまここへ来たらあったから即(購入)」
購入者(40代)「ご飯食べる量をセーブしてたので、とてもありがたいです。
セブン-イレブンでは、無洗米にして2キロ税込み775円。
東京・大阪・四国で販売を開始し、順次全国展開していくという。
株式会社セブン-イレブン・ジャパン 赤羽哲さん「お客様に安心安全にお使いいただける、また手軽に使っていただける商品をお届けできることは、非常に我々としても期待感を持っています」
備蓄米の販売が全国に広がるなか、コメの生産現場は梅雨の大雨に翻弄(ほんろう)されていた。
福岡県久留米市では、先週一週間、毎日雨に見舞われた。
久留米市と大刀洗町で福岡のブランド米「夢つくし」などを作る、ファームクリエイトの佐藤弘也さんはこう話す。
「これくらい水がたまっていると、耕運作業ができない」
本来は田んぼを耕し、雑草を取り除いたうえで田植えをするが、水がたまっているため、耕せないまま田植え作業に。
雑草が栄養を奪うこともあり、収穫量に影響が出そうだという。
2年前には大規模な浸水被害に遭った佐藤さん。
今後も心配の種が残ります。
「例年、猛暑、猛暑で生育障害が発生。白く濁ったようなおコメが育ってしまいます」
先週の雨とは打って変わり、今週は暑さの心配がある。
全国的に35℃以上の猛暑日が多くなると予想されている。
去年は暑さの影響により収穫量が減り、およそ200万円の損害になった。
「去年、60%が1等米、40%が2等米で降格している。2等米は食べる分には問題ないけど、ランクとして1ランク下がる。マイナス何千円で取引しますねっていう指標になる。そこで我々農家の手取りが下がるというのが懸念。暑い日が続いてますので、等級、害虫の被害が心配。コメの生産は赤字ギリギリで今までやってきましたので、収益を確保していきたい」
暑さの影響は他にも出ている。
埼玉県のコメ農家・あらい農産の新井健一さんはこう話す。
「カメムシに吸われた、被害を受けた(去年の)玄米ですね。暑さとカメムシ(収穫量が)2〜3割減った」
体長およそ1センチのイネカメムシ。
イネの養分を吸ってコメを実らせなくしたり、品質を下げたりする害虫だ。
新井さんによると、去年周辺の農家では猛暑やイネカメムシの影響で、コメの収穫量が10分の1に落ち込んだところもあったという。
「今年もカメムシがとんでもない数になるんじゃないのかな」
被害は茨城県でも起こっている。
古河市のコメ農家はこう悔やむ。
「平年は今まで1等米が多かった。最近になってカメムシが増えてからは1等米がほとんどなくなった。悔しいよね、カメムシのためにそうなっちゃうことは」
栃木県では…。
害虫の調査などをする研究センターが田んぼに設置しているのは、夜、光に集まる虫の習性を利用した捕獲機だ。
栃木県農業総合研究センター防除課の小林誠さんはこう話す。
「イネカメムシが(今年)5月に捕獲されました。昨年だと7月から捕獲されたということになります」
「(Q.2カ月早いと、どういったことが危惧される?)昨年より(発生が)多い可能性がありますので、注意喚起していきたいと思っています」
去年大きな被害を出したイネカメムシ。
さらに今年になって新たに判明したことがあったという。
「県南の調査地点の約7割で(イネカメムシの)越冬が確認されたというのは、我々の想定よりも多かったということですね」
栃木県は今年初めて越冬状況を調査。
30地点のうち22地点で落ち葉の下で冬を越すイネカメムシが確認された。
イネカメムシが増加する原因は何なのだろうか?
農研機構中日本農業研究センター 石島力上級研究員「温暖化によってイネカメムシの生育に有利な状況になっていると。発育速度が速くなったり、羽化率も高くなることが分かっております。昨今の暖冬によって越冬死亡率も低下していて、そのこともイネカメムシが増えている要因となっている」
温暖化はイネカメムシの生育に有利な環境となり、今後も増えていく可能性があるという。
イネカメムシの生息地域は近年増えていて、去年37都府県で確認された。
コメ農家「カメムシに農家は泣かされちゃうんだよね」「消毒しても、いったんは逃げるんですよ、羽が生えてるから。だけどまた羽が生えてるから戻ってくる」
舘野かえる農場 舘野廣幸さん「コメが実らないんですよ。稲穂が出ても空っぽの稲穂ですから、収穫しても実が残らない。4割くらい収穫量が減りました」
イネカメムシの対策に乗り出している農家がいます。群馬県沼田市でコメ農家を営む金井農園の金井繁行さんだ。
コメのおいしさを競う国際大会で、最高位の金賞や特別優秀賞を受賞するブランド米のコシヒカリを作っている。
田んぼがあるのは、標高500メートルの中山間地域だ。
「夜間の温度が真夏でも20℃くらいまでに下がりますので、元々病害虫はほとんどいなかったんです。ところが、突然去年カメムシが大発生した」
去年、収穫したコメを見せてもらった。
「こういうのとかね。黒くなっているでしょ。これがカメムシの被害です」
おととしまでは被害はなかったというが、去年イネカメムシが大量発生し、収穫量は3割減になった。
「二度と同じ失敗はしまいという気持ちで、ミントでチャレンジしてみようと思いました」
今年初めて試すのが、ミントを使ったイネカメムシ対策だ。
「ミントを田んぼの土手に埋め込むことによって、カメムシが寄ってこなくなる」
特有の香りで防虫効果があるとされるミントを田んぼの周りに植えることで、被害を抑えることが期待できるという。
16日に発表されたスーパーのコメ平均価格は、4176円で3週連続の値下がりになった。
小泉進次郎農林水産大臣は、今月から本格的に始まった随意契約による備蓄米の放出が影響したとしている。
「間違いなくマーケットが全体として下げ基調に入ってきたと言える」
埼玉県越谷市のスーパーでは、随意契約による備蓄米の販売で、銘柄米の売れ行きが落ち込んでいるという。
スーパーマルサン越谷花田店 八木栄樹店長「備蓄米が他のスーパー、コンビニで出るようになってからは、売れ行きはかなり厳しいです」
60代男性「(Q.銘柄米がもう少し安くなってほしい?)そうですね。3000円台ですかね」
週3回程度だった銘柄米の発注頻度を現在は週1回ほどに。
さらに、精米から1カ月経つ銘柄米は約1割の値引きをし、5キロ税込み4418円で販売するものもある。
八木店長「廃棄するよりは、値段を安くしてお客様に食べてもらう、買っていってもらうという形を取ります」
小泉農水大臣は16日、コメの出来具合を示す「作況指数」の公表を廃止すると発表した。
「コメの作況指数が生産者の実感とずれてきた背景には、作況指数の算出に使っている、過去30年のトレンドを踏まえた収量との比較では、生産現場の実態に合わなくなってきたことなどが挙げられます」
参照元:Yahoo!ニュース