キリン「生茶」がわずか65円!値上げラッシュの中、小売店で格安飲料がズラリと並ぶ 飲料メーカーが抱える“ジレンマ”とは?

飲料品を購入している人

5月下旬、都内のとあるドラッグストアでは、キリンビバレッジの緑茶飲料「生茶」(525ミリリットル)が税抜65円、あるスーパーではサントリー食品インターナショナルのコーラ飲料「ペプシ 生」(600ミリリットル)が同88円で販売されていた。

メーカー希望小売価格の各税抜180円からはいずれも大きくかけ離れている。

ここ数年、原材料高の深刻化を理由に、飲料メーカーは機動的な値上げに踏み切っている。

特に2022年以降は大手各社が毎年価格改定を実施しており、サントリーは2024年10月に販売品目全体の7割に当たる計188品で希望小売価格を6〜32%引き上げた。

さらに、今年10月には9割強に当たる234品目を6〜25%改定を予定するなど、大規模な値上げが続く。

にもかかわらず、小売りの店頭でこんなに安く飲み物が手に入るのはなぜか。

背景には、メーカーがどうしても拭いきれない「恐れ」がある。

飲料会社の量販営業で最も重要なのは、できるだけ多くの陳列棚に、長く商品を置いてもらうこと。

店頭は消費者との大きな接点であり、これを失えば商品が売れないだけでなく、認知すらされないおそれが出てくる。

基本的に、どのメーカーのどの商品をどう並べ、いくらで販売するかを決めるのはスーパーやドラッグストアなどの小売店。

小売り側からすれば、客を呼び込める商品、数量が出る商品でなければ仕入れる意味がない。

そのため売れない商品はすぐに棚から外されてしまう。

その結果、“棚落ち”を恐れるメーカー同士の価格競争が起きる。

よく用いられる手法がリベート(販売奨励金)だ。

メーカーは取引先の小売店に対し「何月までにこの数量を売ってくれたら、この金額を支払います」と提案する。

承諾した小売店は客の目につきやすい入り口付近に商品を積み上げたり、他社品より目立つPOPをつけるほか、店頭価格を抑えるなどしてよく売れるよう工夫する。

結果として、値上げしたのにリベートなどで値下げする、という事態が起きている。

キリンは昨年10月に生茶(525ミリリットル)の希望小売価格を20円引き上げ、税抜160円から180円となった。

しかし、小売店における平均店頭価格をみると、2024年5月に税抜72円だった生茶は、2025年5月に同75円と、わずか3円しか上がっていない(True Data「ウレコン」、スーパー、ドラッグストアのデータを基に集計)。

サントリー食品インターナショナルの国内飲料事業を統括する内貴八郎専務は「売りが下がる怖さを勇気を持ってなんとか止めて、業界全体で飲料の価格を上げられたら1番いい」と語る。

飲料メーカーがこだわりをもって商品を開発・製造しても、薄利多売が続けば、消費者や小売店が抱く商品へのイメージや価値は一向に上がらない。

コスト増で土俵際に追い詰められているメーカー各社は、まさに今、大きな転換点を迎えている。

参照元:Yahoo!ニュース