「見通し立たず苦しい」 自動車業界、関税影響長期化を懸念

日米首脳会談で関税交渉の合意が持ち越された。
とりわけネックになっているとみられるのが自動車関税の引き下げだ。
日本の自動車業界からは「妥協して決着するよりはいい」との声が上がる一方、「見通しが立たない」と影響長期化への懸念も広がった。
「見通しが立てられない現状が最も苦しい」。
合意見送りが伝わった17日、大手自動車メーカー関係者はもどかしさを口にした。
日本政府は「自動車は国益」(石破茂首相)だとして粘り強く交渉する構え。
だが、トランプ米政権が輸入車に25%の追加関税を発動してから2カ月余りで目立った進展はなく、自動車業界には焦りも募る。
自動車各社は2026年3月期の関税影響として、ホンダが6500億円、日産自動車が最大4500億円、トヨタ自動車が4、5月の2カ月分で1800億円のマイナスを見込む。
米国依存度が高いマツダやSUBARU(スバル)は業績予想の開示を見送った。
「交渉は中身が重要。妥協して落ち着くくらいなら継続協議の方が納得できる」として政府に慎重な対応を求める声もあるが、交渉は終わりが見えず、引き下げも望めそうにない。
それどころかトランプ大統領は更なる税率の引き上げもほのめかす。
業績下押し圧力は続く見通しで、ある大手自動車メーカー幹部は「米国でモデルチェンジに合わせて価格転嫁するほかない」と値上げを示唆する。
追加関税の撤廃を求める自動車業界にさえ「交渉が限界を迎えている印象だ」(大手自動車メーカー関係者)との見方も出てきた。
例えば、日本に先んじて合意に至った英国はもともと対米貿易赤字国で、対米輸出台数も年10万台程度と日本の10分の1以下に過ぎない。
それにもかかわらず10%の自動車関税が残ったことから「日本だけが撤廃されるのは一般論からみても難しいだろう」とこぼす。
経済同友会の新浪剛史代表幹事は17日の定例記者会見で、現状を覆すには「日本は相当なカードを用意しないといけない」と指摘。
仮に交渉の結果、自動車関税が引き下げられたとしても「(税率が)10%を切るのは難しい。新産業を育てるなど日本は『自動車一本足打法』から脱却すべきだ」との見方を示した。
一方、市場は今回の結果を冷静に受け止めたようだ。
17日の東京株式市場で日経平均株価(225種)は前日終値比225円41銭高の3万8536円74銭。
みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「閣僚級の合意がない状況でトップが会っても結論を得るのは難しい。今回で決まるという期待は大きくなく、結果はサプライズではなかった」と話した。
7月9日まで発動が停止されている相互関税の上乗せ分の停止期間の延長について、SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「日本は米国にとっての重要なパートナーなので延長はあり得る」と指摘。
また、石破首相が合意時期の目標に言及していない点については、「参院選を考えると交渉を急ぎたいが、急げば米国に足元を見られてしまう。国益のため慎重に時間をかけてやっていく方が選挙に向けて望ましいと考えたのだろう」と話した。
参照元:Yahoo!ニュース