狙われる資源ごみ 「安心して捨てられない」市民恐怖 持ち去り規制もハードル高く

資源ごみをイメージした画像

資源価格の高騰を背景に資源ごみを収集場所から持ち去る行為が相次ぎ、自治体が対策に苦慮している。

持ち去りを条例で規制する自治体もあるが、違反者の特定が難しいなど課題は多い。

京都府宇治市では今年度から資源ごみを通年で無料戸別回収する対策に乗り出した。

全国でも珍しく、環境省はモデル事業に採択したが、職員数の確保など導入へのハードルは高い。

資源ごみ回収は自治体の収入にも直結するだけに実効性ある対策が求められる。

鉄や金属類など資源価格の高騰は近年顕著となっている。

鉄リサイクル業界団体によると、鉄スクラップの価格はこれまで1トン当たり2万円前後で推移していたが、新型コロナウイルス禍や、ロシアのウクライナ侵略などの影響で令和2年10月ごろから価格が高騰。

5年は1トン当たり4万~5万円に跳ね上がったという。

環境省が4年度に全国1741市区町村を対象に資源ごみの持ち去りについて調査したところ、729市区町村(41.9%)が持ち去り事案があったと回答した。

調査によると、持ち去り行為について条例を制定、または制定予定や検討中の自治体は3割近くに上るが、人員不足などで導入に踏み切らないところも多い。さらに制定したとしても持ち去った行為者が特定できずにそのままとなるケースも多いとみられる。

宇治市によると、これまで週1回の資源ごみ収集のタイミングで、業者などが持ち去る行為が多発していた。

家電や自転車を解体し必要なパーツだけを抜き取り、不要な部分は不法投棄するケースもあった。

定期パトロールを続けていたが、市民から「安心して捨てられない」といった相談や苦情が寄せられたため、市は2年前に週1回、戸別訪問で資源ごみを無料回収するサービスを期間限定で実施。

小型・中型家電や自転車、金属製調理器具などを対象としたところ2年間で約1200件の利用があった。

担当者は「予想を超える反響。収集が追い付かない状況だった」と話す。

効果は数字にも表れた。令和5年度の資源ごみ売却益99万円のうち、80万円分は戸別回収分が占めるほどに。

着実なリサイクルによる再資源化にもつながり、ごみ処理費も減少した。

このため市は今年度からは通年で週2回の実施に拡大。

さらなるニーズがあれば収集日の拡大も検討する方針だ。

小型家電などの回収量が伸び悩む中、環境省は5年度、宇治市の取り組みを小型家電のリサイクルに関するモデル事業に採択し広がりを期待する。

ただ、宇治市でごみ収集に従事する職員は約60人に上るが、他の自治体では民間委託によりゼロのところも多く、無料戸別回収の実現可能性は低いのが実情だ。

環境省は「地域実情に合わせた持ち去り対策を実施してほしい」としている。

資源ごみを巡る環境省の調査(令和4年度)では、23.6%にあたる411自治体が、ごみの持ち去りを規制する条例を制定。

このうち半数以上が違反した場合に罰金や過料などを課すと規定していた。

持ち去り行為を窃盗罪に問えるよう、資源ごみの所有権を自治体に帰属させると条例で定めているところもある。

一方、実際に持ち去りを確認した場合にどのような対応を取ったかを問うたところ、「助言・指導」(69.0%、2万9707件)が最多だったが、「罰金・過料・科料」を科したのは0.4%、157件にとどまった。

条例を制定している自治体が「課題」として挙げた項目は「違反者の特定が困難」が最も多い。

次いで警察など関係機関との連携▽違反者への指導方法▽抑止力としての実効性が低い―だった。

制定を予定していない自治体の中には、行為者の特定や連携体制構築の難しさを指摘する意見もあった。

資源ごみの持ち去りは自治体の収入減に直結する。

「持ち去り事案で生じている問題」を自治体に尋ねると、最多は「周辺住民からの苦情などへの対応」(65.8%)だったが、次は「(ごみの売却量の減少により)市の収入が減少した」(38.8%)だった。

条例の制定を予定していない市区町村は、ごみ集積所への看板や監視カメラの設置▽職員や自治会長立ち会いのもとでの回収▽資源ごみ集積所の施錠―といった対策が有効だと回答したという。

資源価格が高騰する中、持ち去り行為は今後も多くなるとみられる。

悪質行為を取り締まるためには体制構築に手間と人員を割かなくてはいけない。

ごみ収集を巡る問題をどれだけ重要視するか。

自治体間で温度差はあるだろう。

京都府宇治市のような無料回収事業を実現するにはごみ収集に従事する多数の職員が必要だ。

しかし、近年は多くの自治体で家庭ごみの収集を民間委託しており、職員を配置していない。

条例で規制したり、定期的にパトロールしたりするなど対策の強化が求められる。

各自治体が機動力を向上させ、住民のかゆいところに手が届くようなサービスを提供するための工夫が必要だ。

参照元:Yahoo!ニュース