「不登校家庭に10万円」損保ジャパンが業界初の保険をつくった理由とは? 受給条件、使い道を担当者に聞く

不登校の中学生をイメージした画像

不登校30万人時代と言われる中、損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)が、今年4月から業界初の不登校家庭の支援に10万円を支給する保険販売をスタートした。

受給条件や使い道などについて、本保険の開発担当者・舟根正浩さんに聞いた。

――業界初の不登校向けの保険が登場した経緯を教えてください。

きっかけは、身近にお子さんが不登校を経験された方がいたことと、子どもの授業参観に行った際に各クラス1~2名程度の児童生徒がごく普通に欠席していることに衝撃を受けたことです。

「子どもが不登校になり、仕事に身が入らなくなったり、平日一人にしておけずパートナーが仕事を辞めたり……。登校できない分、フリースクールやオンラインなどの学習代もかなりかかって経済的負担も大きい」と深刻に悩まれる方々の心情を目の当たりにしました。

文部科学省の調査によれば、小・中学校の不登校の子どもの数は約34万人に達し、過去最多を更新しています(令和5年の調査結果)。

この現実を前に、「もはや、他人事ではない」と強く感じました。

不登校による保護者への精神的・経済的な負担を軽減するために保険会社として何ができるかを模索し、各自治体や学校が行われている様々な不登校支援の促進と公的機関では届きにくい「経済的支援」の両方を補完できる商品開発に着手しました。

――通信教材やフリースクール、時には親の仕事への影響……。その負担は決して小さくありません。この保険(復学支援見舞金補償保険)は、どのようなものですか?

学校に在籍する満6歳~15歳(小学1年生~中学3年生)を対象に、従来のケガや病気、賠償補償に加え、不登校時の「学びの補償」を付帯した新しい保険です。

不登校となった際、支援金として10万円を給付します。

支援金を受け取るには、文部科学省が定める不登校の定義、「病気や経済的な理由以外で、年間30日以上欠席した状態」を満たすことが必要です。

加えて、学校が指定するスクールカウンセラー等による専門的な相談を受けた場合に支給されます。

不登校の子どもたちは、学びを放棄しているわけではありません。

けれど約4割の子どもが学校内外から復学支援や学びの機会が確保されておらず、学びの機会を失っていると言われています。

例えば、「通信教育をやりたいけれど、お金がないから我慢しよう」といった選択を余儀なくされる家庭もあるでしょう。

支援金10万円は決して十分な金額ではありませんが、子どもの学びたい気持ちを後押しし、最初の一歩を踏み出す助けになることを目指しています。

――保険に加入する条件とは?

個人で契約するのでなく、自治体、学校、PTAなど団体を通じた契約が基本です。

1人あたりの保険料は年間1000円程度。

公立学校の場合は各都道府県のPTA協議会などを通じて既存の傷害保険などにプラスする形で各家庭ごとに加入してもらいます。

現在は愛媛県松山市のPTAが先行して契約していますが、今後はより多くのご家庭にお届けできるよう、全国の自治体やPTAへの案内を順次行っております。

――支援金は何に使っても良いのですか?

フリースクールや塾の入学金、通信教材費、家庭教師代など、不登校時の学びを支えるための費用として使うことを想定しています。

ただし、まだ心の休息が十分取れておらず、学びの場へ踏み出せないお子さまもいるかもしれません。

カウンセリングはもちろん、個人的には、お子さまの好きな本や画材を購入したり、博物館や科学館などに出かけたりするのもよい使い方だと思います。

子どもが笑顔を取り戻し、自分らしさを見つける第一歩として、この支援金を活用していただけたら嬉しいです。

――10万円を給付するだけでは、本質的な課題解決にはならないという声もありますが……。

支援金はあくまで、お子さまが再び自身の学びを始める最初の一歩を後押しするものです。

支払事由(しはらいじゆう)の一つに「スクールカウンセラー等への専門的な相談」を設定しているのには、経済的補償をきっかけに、各学校や自治体の支援とつなげたいという思いがあります。

公的な支援や相談窓口とのつながりを強化し、不登校に悩む家庭が孤立せず、適切な支援を受けられる環境を整えることが重要だと考えています。

――今後の展望についてお聞かせください。

全国すべての自治体がこの保険に加入し、任意保険ではなくなることが理想です。

もしお子さまが不登校になったとき、「そんな保険があったのね」と保護者が自然に知り、少しでも心が軽くなるようなものになれたらと思います。

今後は、民間の支援も含めて最適な学びをアドバイスできる環境を新しい保険を通じて、子どもたちの未来を支える一助となれるよう、引き続き取り組んでいきます。

参照元:Yahoo!ニュース