福岡市で増える高級賃貸住宅 家賃100万円超も 開発事業者の狙いと課題

福岡市中心部で、毎月の家賃が数十万円クラスの高級賃貸住宅が増えている。
高所得の企業幹部や富裕層をターゲットに据え、月額100万円を超える物件も出てきた。
都市の成長などを背景に開発事業者の参入が目立つ一方で、完成しても満室にならず苦戦する状況も一部で見られる。
市場は広がるのか。
今後の動向に業界の関心が高まっている。
福岡市地下鉄空港線の唐人町駅から徒歩約5分。
中央区の大濠公園近くに立つ地上7階建ての「CLUB NEXUS(クラブネクサス)大濠西」は、各部屋のガラス窓が不規則に並ぶ外観が目を引く。
部屋は間仕切りが少なく、レイアウトの自由度が高い設計となっている。
開発を手がけた福岡地所(福岡市)によると、昨年10月に完成した「高級賃貸住宅事業の第1号」。
1LDK(約40~70平方メートル)と2LDK(約64~70平方メートル)の全35部屋で、家賃は月13万~30万円台。
犬や猫と同居できるほか、1階にカフェを入れて入居者の生活満足度を高めている。
同社の古賀良太・開発事業三部長(53)は「デザイン性の高さはもちろん、スペックも分譲マンション並み」と自信を見せる。
単身者を中心に入居は「順調」といい、来年には「第2号」を建てる予定だ。
中央区では高級賃貸住宅の開発が相次ぐ。
積水ハウス(大阪市)は昨年7月に「シャーメゾン浄水通り」を完成させた。
多様な機器を通信でつなぐ「モノのインターネット(IoT)」を駆使した物件で、家賃は同社グループが九州で展開する賃貸で最高水準の月53万~76万円台だ。
LPガス販売などの柴田産業(福岡市)は今年4月、西鉄福岡(天神)駅から徒歩約10分の場所に賃貸マンションを開発。
ファミリー層の入居を想定した造りで、最上層部の家賃は月100万円を超える。
福岡では富裕層を狙った分譲マンションの開発は進んでいたが、賃貸物件が増えたのはここ数年という。
入居者の多くは、福岡に赴任する大手企業の幹部や、企業経営者。
セカンドハウスのように使う人も。
好調な企業業績などを背景に、高額な賃料を支払える層が一定数いるとみられる。
「これまで高価格帯の賃貸があまりなく、物件が登場して需要が顕在化した」。
不動産開発・販売のラ・アトレ(東京)福岡支店の前田広希課長(37)は語る。
同社は昨年1月、中央区薬院に平均家賃が月85万円のマンションを建てた。
地上10階建てで8部屋のみ。各部屋は天井高約6メートルのメゾネットタイプで体積の大きい優雅な空間が売りだ。
1年後にほぼ満室となり、物件の買い手企業も現れた。
今年4月には売却して利益を得た。
「福岡は全国屈指の人口増加数で、再開発に伴う企業進出も活発。需要はさらに増すだろう」と前田課長。
すでに次の開発用地を探しているという。
ただ、豪華で住みやすくてもすぐに契約につながるとは限らない。
不動産関係者によると、思うように入居が伸びず募集賃料を下げようとする動きもある。
ある開発事業者は「比較できる物件が少なく、まだニーズの実態がつかみにくい」。
完成後も満室にならない物件は珍しくない。
福岡の市場の現状について、日本不動産研究所九州支社(福岡市)の口石智義支社長(53)は「高級賃貸向けの事業用地の引き合いが強いとは言えない」と評価。
資本力の大きい企業や富裕層が多い東京などに比べると市場拡大のハードルは高いとした上で、「再開発や半導体産業の集積は追い風だ。県外から流入する需要をいかに取り込めるかが成長の鍵となる」と話す。
参照元:Yahoo!ニュース