ロシアで兵士に加わり消えた夫と真相 「遺族」になれず、声を絞り出すインド人妻

インドの国旗を撮影した画像

ロシアによるウクライナ侵攻では、遠く離れたインドからロシア側兵士として加わった人たちがいる。

戦死しても多くのケースで遺体や遺品の所在は分かっていない。

「夫がどうなったのか真相も消え去った」。

死亡した可能性が高いのに行方不明とされ「遺族」になれないインド人女性が声を絞り出した。

「夫はロシア軍に入れば家族の暮らしを楽にさせられると考えていた」。

インド北部アムリツァルに住むパルミンデル・コールさん(34)がため息交じりに語り始めた。

夫テジパル・シンさんは2024年1月ロシアに向かい、数カ月後に連絡が途絶えた。

渡航時29歳。

6歳の息子と3歳の娘を残しての出征だった。

シンさんは近所の製紙工場で働いていた。

軍務経験はなく、ロシア語は話せない。

それでもかたくなにロシア軍に入りたいと主張したため、夫妻はよく口論になった。

「彼は『なぜ止めるんだ。入隊すれば子どもたちの将来のためになるじゃないか』とよく怒っていた」とコールさんは振り返る。

ロシアにはあっせん業者を通じて渡ったようだがコールさんは詳細を把握していない。

2024年1月に到着し、数日後にはロシアの軍服を着た写真をスマートフォンで送ってきた。

首都モスクワで戦闘訓練を受けていると言っていた。

時折連絡は取れていたが、2024年3月3日の会話が最後になった。

「今は前線にいる。僕は大丈夫だから。電話できなくても心配しないでくれ」

その後、連絡が取れないまま3カ月が過ぎた。

ロシア軍に不採用となったインド人男性と知り合う機会があり、夫の近況を調べてもらうと、2024年6月に別のインド人から「彼はもう生きていない」と連絡があった。

しかし公式通知はない。

モスクワのインド大使館を通じロシア側に遺体の返還を求めると「行方不明」との返事が来た。

いてもたってもいられず2024年9月に単身ロシアに渡り、当局に掛け合ったが、らちが明かなかった。

ロシア政府は死亡宣告をしない一方で、コールさんに年金や子どもの教育費の支給を始めた。

一般的に死亡確認後に始まる給付だ。

「夫の消息の真相を知っているはずなのに」。疑念が募った。

インド政府によると、ロシア軍に参加し戦死した自国民は12人、行方不明者は16人。

シンさんをどちらに分類しているかは明かさなかった。

コールさんは「この戦争に巻き込まれた全ての家族は私と同じように息子や夫、兄弟が帰ってくるのを待ち望んでいる」と語ると涙を止められなくなった。

「戦争なんて誰も望んでいない。失うばかりで得るものなんてない。弔う遺体すらないのだから」

インド外務省によると、ロシア軍にはインド人126人が加わり、96人が既に帰国した。

計28人が死亡・行方不明、残る2人は軍務に就いているとみられる。

インド人のロシア渡航にはソーシャルメディアなどを悪用したインド国内の人身売買グループが関与している疑いがあるほか、出稼ぎ目的のケースもある。

ロシア側は2024年7月、インドのモディ首相の要請を受け、全員の除隊を認める方針を決めていた。

参照元:Yahoo!ニュース