米大学、ドルや米国債に続いて「売り」の対象か

外国人学生の夢だった米国留学が、悪夢と化してしまった。
トランプ米大統領とハーバード大が対立し、米政権が外国人学生全般を攻撃していることで、米国留学の価値は損なわれた。
トランプ氏の予想不可能な行動によって、ドルや米国債と同じく米国の大学の学位も国際的な魅力を失うのかもしれない。
トランプ政権は5月、警察と定期的に接触のあった数千人の外国人留学生を標的にし、米国での就学許可を取り消した。
政府は同22日、ハーバード大の留学生受け入れ資格取り消しを決定し、同大は提訴している。
ルビオ国務長官は同28日、中国人留学生の学生ビザ(査証)を「積極的に」取り消していくと表明した。
この攻撃は世界全体の教育市場を揺さぶっている。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)によると、2022年に母国以外の機関に登録している学生は世界中で約700万人に上る。
ドルが世界貿易の基軸通貨であるのと同様に、米国は留学においても世界最大の吸引力を誇り、米国務省によると2023―24年度の留学生は過去最高の110万人を記録した。
その半分以上がインドと中国からの留学生だ。
米商務省の計算では、留学生は国内の学生よりも高い学費を払っており、23年時点で米経済に500億ドル以上寄与した。
これは公園と美術館、博物館による寄与と並ぶ水準だ。
ファンドマネジャーらがドルを売ってユーロやスイスフランを買っているのと時を同じくして、学生は対応が冷たくなった米国を避けて他の行き先を探すようになった。
しかし留学生の流入を阻止しようとしているのは米国だけではない。
カナダとオーストラリアも、住宅や医療への負荷や移民反対ムードの高まりを背景に、外国人留学生の受け入れに上限を設けた。
英国は最近、留学生が卒業後に英国に滞在できる期間の制限を提案した。
とはいえ、打撃の度合いは国によってまちまちだ。
IDPエデュケーションの4月の報告によると、世界最多の留学生を送り出しているインドにおいて、最も人気の留学先は米国からオーストラリアに代わった。
対照的に、トランプ政権による手当たり次第のやり方を見て、留学生は米国に背を向けている。
大学のコースに対する関心の度合いを調査しているキーストーン・エデュケーション・グループによると、米国への外国からの関心は、全ての教育レベルにおいて3月以来45%落ち込んだ。
これに対してオーストラリア、英国、カナダのコースについての検索は、それぞれ26%、22%、11%増えている。
スペインのIE大学のマヌエル・ムニス学長はBREAKINGVIEWSに対し、来年度に向けて海外からの関心が急増していると語った。
米国に対する心理が悪化して25年と26年の留学生受け入れが減るなら、恩恵を被るのはオーストラリアからカナダに至る外国の大学だろう。
米国の学術界は歯止めのない「売り」に見舞われるリスクがある。
参照元:REUTERS(ロイター)