かつてないほど強力な米企業、迫る嵐にも耐えられるか

関税、債券利回り上昇、そして「スタグフレーション」という逆風が米経済を待ち構えている。
しかし米国企業は、嵐に備えるにはこれ以上ないほど良好な状態だ。
先週発表されたデータによると、米企業の税引き前利益は第1・四半期に前期比1181億ドル、率にして2.9%減少し、2020年以来で最も急スピードの減益となった。
企業は関税が本格的に実施される前からその影響を感じ始めているらしい。
税引き後利益は3.6%減少した。
しかし、昨年第4・四半期に利益が2050億ドル、すなわち5.4%も急増したことを考えれば、警戒感も和らぐはずだ。
第1・四半期の減益は、絶好調の四半期を経た後の正常化に過ぎなかった。
しかも、第1・四半期は前年同期比で見ると5%以上の増益だった。
確かに、今後数四半期は混乱が訪れるかもしれない。
成長が減速したり、インフレ率が上昇し始めたりすれば、企業の利ざやは圧迫され、消費者は支出を抑え、企業の価格決定力が損なわれるかもしれない。
しかし大局的に見れば、米企業はかつてないほど強力になっている。
国内総生産(GDP)もしくは国内総所得(GDI)に対する企業利益の割合は、依然として途方もなく高い。
データの取り方次第では、過去最高に近いケースもある。
在庫評価と減価償却を調整したベースの税引き前利益を見てみよう。
この利益の対GDP比率は第1・四半期に季節調整済みの年率ベースでわずかに低下して13.0%となったが、比較対象の第4・四半期は過去最高の13.5%だった。
税引き後利益の対GDP比率は、第4・四半期の12.2%から12%に低下した。
しかしこれも小幅な低下であり、2021年第2・四半期に記録した12.8%という過去最高値に近い水準を保っている。
過去75年間の平均は7.5%に満たない。
マクミラン元英首相は1957年、「(英国が)こんなに良い時期は今までなかった」と語ったが、今なら「米企業がこんなに良い時期は今までなかった」と言えるだろう。逆風が強まりつつあるだけに、これは幸いだ。
現在くすぶっている数々のリスクの中で、どれだけのリスクが実体経済を襲うかについては議論の余地があるだろう。
しかし関税、消費者需要の減少、価格決定力の低下、金利の高止まりという悪材料が直撃した場合、企業がある程度の痛みを感じるのは間違いなさそうだ。
EYパルテノンのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は「(世界の)分裂が進む環境下では、各国ごとに経済の基調がばらばらになる。この環境は国内でも世界中でも利益を圧迫するだろう」と言う。
関税と保護主義は世界のサプライチェーン(供給網)と貿易全般にとって重圧となる。この環境下で、国内で生み出される利益と、米国以外の世界(rest of the world=RoW)で稼いだ利益がどれほど乖離(かいり)するかは見物だ。
もちろん、総利益の大半を占めるのは国内利益だが、その比率は最近拡大している。
裏返せば、海外で得た利益の割合が急減しているのだ。
トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争が成功し、米企業による生産の国内回帰が進むようなら、「RoW利益」の比率はさらに縮小するかもしれない。
新型コロナのパンデミックが起こる直前の2019年第4・四半期、国内で稼いだ利益は季節調整済みの年率ベースで総利益2兆1300万ドルの75%前後で、「RoW利益」は約25%だった。
今年第1・四半期は、国内利益の割合が87.5%、RoW利益は12.5%と半減している。
企業の収益力は試されつつある。
LSEG・I/B/E/Sによると、S&P500社の第2・四半期の増益率予想は5.5%で、2カ月前の10.2%から低下した。
2025年の増益率予想は現在8.3%と、年初に予想された14.0%から下がっている。
逆風は強まっているが、米企業は強い立ち位置からそれに立ち向かうことができる。
参照元:REUTERS(ロイター)