小中学校で減少する「家庭訪問」いる?いらない?教員も保護者も思いはさまざま

家庭訪問をイメージした写真

5月の大型連休前後の恒例行事として実施されてきた小中学校の家庭訪問が、新型コロナウイルスの感染拡大による一斉休校や接触機会の制限を経て減少している。

背景には教員の働き方改革のほか、共働き家庭の負担軽減もあるとされるが、保護者はどのように捉えているのだろうか。

京都や滋賀の小中学生の親に意見を尋ねると、「リラックスして先生と話せる貴重な機会」と言う人もいれば、「学校で行う個人面談で十分」と話す人もいた。

子どもの担任教員と話す必要性を感じていない保護者もおり、家庭訪問に対する思いはさまざまだ。

京都市教育委員会によると、家庭訪問の実態を調査したことはないが、2020年の新型コロナによる一斉休校を機に年度始めの家庭訪問を実施する学校は減少しており、現在、小学校は半数程度、中学校は3分の1以下の学校が実施しているという。

全児童生徒対象の家庭訪問を取りやめた小中学校では、希望する家庭だけ行ったり、校内での個人面談に切り替えたりしている。

識者によると、教員と家庭の双方の負担軽減を理由に、全国的にも減少傾向にあるという。

今も家庭訪問のある小学校に子どもを通わせる同市西京区の会社員女性(44)は「子どもの学校での様子は知りたいが、個人面談でも聞ける。家庭訪問はなくていい」と考える。

自宅に担任教員を迎えるのに仕事の調整や特別な準備が必要だったわけではなく、負担感はあまりない。

ただ、「家に先生を入れるのが嫌だという保護者もいると聞く。家庭訪問は子どもの背景を知っておきたい先生側の都合ではないか」と感じている。

家庭訪問の必要性については教員の間でも意見が分かれている。

「生活上の課題を抱えている子どもの支援に家庭訪問は欠かせない」と考える教員がいる一方、「現場は過労死レベルの働き方をしている。やめられることはやめないと教育が崩壊する」と危機感を抱く教員もおり、校内でも賛否が割れる場合がある。

同市南区の小学校に子どもを通わせるパート女性(39)は、2年連続で希望制の家庭訪問を断った。

「3年前の家庭訪問の際に、先生がとても疲れている印象を受けた。自宅まで来てもらうのは悪いと思った」のが一番の理由だ。

家庭訪問を希望せず、個人面談もなかった昨年は、1年を通して担任教員と1対1で話す機会はなかった。

「友だち関係は良く、学習面で困っていることもない。特に問題はなかった」と振り返る。

一方、大津市のアルバイト男性(45)は、家庭訪問に代わって実施されるようになった小学校の個人面談に必ず足を運ぶ。

「子どもに何かあった時のために、担任の先生がどんな人か知っておきたい」と思うからだ。

男性は地元出身ではないが、小学校時代、その日に家庭訪問を受ける4、5人の子ども同士で遊ぶ約束をして、家から家へと先生を案内して回った楽しい思い出がある。

「PTAの仕事で夕方学校に行くと、先生たちが無言でパソコンに向かっている姿を目にする。削れる仕事は他にないのだろうか」

中学生を育てる京都市上京区のパート女性(42)は今年、小学校ではなくなった家庭訪問を5年ぶりに受けた。

「教員の働き方改革でいろいろなことが簡素になる中、生徒の家庭を一軒ずつ回ってくれるのはありがたい。先生とリラックスして話せる貴重な機会だと思った」と話す。

学校で個人面談をする場合も仕事の調整をするのは同じだが、学校だと廊下で次を待つ保護者に聞こえていないか、気になる時があるという。

「家庭訪問をやめたとしても、先生の仕事がギリギリの状態であることに変わりはないように思う。大切なものまで省くより、先生を増やしていく方向に教育が変わっていってほしい」と語った。

参照元:Yahoo!ニュース