小泉氏に「国民の怒り収めて」 前農相のコメ失言が直撃の都議選候補、逆風払拭へすがる思い

米を撮影した画像

今年は6月22日東京都議会選挙、さらに7月には参院選がある。

当然、各政党は二つの選挙に総力を挙げて取り組む。

ただ、その大事な選挙直前に自民党に大きな失点があった。

農相を務めていた江藤拓氏の「コメは買ったことがない」との発言だ。

批判を浴びた江藤氏は、都議選まで1カ月のタイミングで農相を更迭された。

元々、この二つの選挙は自民党にとって難しい戦いが予想されていた。

自民党派閥、さらに都議会の会派で裏金事件があったからだ。

江藤氏の後を継いだ小泉進次郎氏は得意の発信力を駆使し、コメの供給状況改善を試みる。

ただ、市民目線を欠いた閣僚の失言がなくなるわけではない。

都議選への影響をどうみているのか。

出馬する候補に話を聞いた。

都議選に立候補するある候補は、落胆した様子を隠さなかった。

「選挙前に本当に余計だよ」。

裏金事件の余波が残る中、追い打ちをかけるような発言によるダメージは大きい。

「いつも選挙前に誰かが失言をしているような気がする」とため息はやまない。

政治家として、パーティーでの立ち振る舞いを理解できないわけではない。

「パーティーだから冗談を言おうと思ったんだろう。ただ、立場を考えないと」。

選挙まで1カ月を切り、時間もない。

「批判はされるだろうけど、地道に活動していくしかないね」と自分に言い聞かせたるように話した。

別の男性候補者はこう嘆いた。

「本当にいつもなんですよ。選挙前になると誰かが不祥事を起こす。だいたい失言ですよね」

彼が懸念するのは、失言した江藤氏と自分たちが同一視されることだ。

「自民党全体が世間知らずで、生活者の視点を欠いた党とも見られかねない」と話す言葉に力はない。

自分が地元の支持者に支えられているだけに、発言はこたえた。

「自分もスーパーに行くし、お米の価格が気になっている。そういった地方議員がほとんどのはず。生活者の視点に立って政策を考えていることを地道に訴えていくしかない」。

最初に話を聞いた候補者と同じ、「地道」という言葉を口にした。

もう一人、選挙戦の準備に追われる候補に聞いた。

電話越しの声からは怒りの感情が伝わってきた。

まず、こう切り出した。

「農相には辞めてもらった方がいいと思っていたので、辞任は良かった。コメの話はみんな心配しているのに、能天気なことを言っていた。消費者のことを考えていない発言だった」

石破茂首相は、物価高やコメ価格の高騰に対応し切れていない。

「備蓄米は放出しているが、国民には届いていない。政府にできることは多いのに無策」。

口調からはいらだちが見え隠れした。

その上で、コロナ禍での東京都の施策を例に挙げた。

「東京都はあのとき生活困窮者に米を送ったが、そういうことはできないんだろうか。命に関わる問題だから、ダメなりに政策を出すべきだ」

厳しい選挙戦を前に、たまった不満を吐き出すように言葉を続ける。

「100人のうち100人が良いと思う政策なんてない。良いと思ってくれる人が少しでもいるように、何かしらか手を打つべきだ。国民からそっぽを向かれても仕方ない」

実際、有権者の反応はどうなのか。

「今日だって、見たこともない通りがかりの人に『だめだ、自民党は』と怒られた。自民党というだけで真っ向から批判を浴びている。とばっちり」。

自身に由来する問題なら甘んじて受けるつもりだが、直接関係ない不祥事となるとなかなか納得はしにくいようだ。

望みを託すのは、新たな農相となった小泉氏だ。

就任早々、発信力を発揮して流通経路の拡大を推進する。

「小泉さんなら批判はされながらも、何かしらかやってくれるんじゃないかと期待している。少しでも国民の怒りが収まるといい」。

祈るような口調だった。

参照元:Yahoo!ニュース