万博海外パビリオン、工事費未払いトラブル相次ぐ 工事中断でまだ開館できず・「被害者の会」結成も

大阪・関西万博の海外パビリオンを巡り、工事費の未払いを訴える業者が相次いでいる。
読売新聞の取材では、少なくとも3館でトラブルがあり、うち2館は30日時点で開館していない。
何が起こっているのか。
アフリカ南西部にあるアンゴラのパビリオン工事に関わった設備会社が30日、未払いを訴える記者会見を大阪市内で開き、男性社員は「誇りを持って働いたのに、こんな仕打ちはひどい」と語気を強めた。
アンゴラ館は、日本国際博覧会協会(万博協会)が建物の建設を肩代わりする「タイプX」。
万博協会から一部について開館許可が出たことを受け、4月13日の開幕日はオープンしたが、その後、「技術的調整」を理由に休館している。
同社によると、2月から開幕日まで「4次下請け」として連日、電気関係の内装工事を実施したが、「3次下請け」の業者から3、4月分の約4300万円が支払われていない。
3次業者からは、従業員が金を持ち逃げしたとの説明があったという。
設備会社は5月上旬、大阪府に相談。
この3次業者は建設業法に基づく許可がないことが判明し、府が経緯を調べている。
同社は他の下請け3社と「被害者の会」を結成。
「訴訟は、弁護士に着手金を払う余力が出たら考える。SNSなどで支援を呼びかけたい」と話した。
読売新聞記者は29日と30日、大阪市内にある3次業者の本社を訪ねたが、出入り口は閉まっており、取材はできなかった。
同国関係者は取材に「政府としては全ての費用を支払っており、開館できないのは日本の業者間の問題だ」と話した。
アンゴラ大使館によると、同国は来月2日に見解を示すとしている。
未払いで工事が止まり、一度も開館できていない国もある。
参加国が自前で建設する「タイプA」のネパール館。
外観はほぼ完成しているが、万博協会の開館許可は出ていない。
「工事は90%完了している。ネパール側がお金を払えば済む話だ」
匿名を条件に取材に応じた関係者の男性によると、工事はネパール国内の法人から日本の建設業者が受注し、昨年夏に工事が始まった。
しかし、秋頃から支払いが滞り始め、法人側の説明も「国の方針が変わった」「送金トラブルがあった」と変遷した。
しばらくは業者側が持ち出しで工事を続けたが、今年1月に中止を判断。
この男性は「万博のような国家事業でここまで話がこじれるとは」と話す。
万博協会も早くからトラブルを把握し、話し合いを促してきた。
協会幹部によると、ネパール政府は万博への出展権を法人側に売却しており、同国政府が工事費を立て替えることは困難だという。
ネパールは31日の予定だったナショナルデーも延期に。
同国からの留学生ダハハ・アンキタさん(22)(大阪市西成区)は「世界の国が集まる万博で、本当に恥ずかしい。一日も早くオープンしてほしい」と切望した。
タイプAで出展しているある国のパビリオンでは、受注した日本国内の元請けと下請けの業者間で支払いを巡りトラブルになっている。
読売新聞の取材に対し、少なくとも3社が現時点で未払いがあるとし、金額は計1億円を超える。
3社の社長は「従業員に給料を払えず借金した。このままでは倒産だ」などと訴える。
取材に応じた元請けの社長は、工事費の一部について本国が審査中だとし、未払いではないと説明。
「国によって事情が違い、単純な問題ではない」と主張する。
日本政府は、海外パビリオン工事の代金が支払われなかった場合に全額または大半を補償する「万博貿易保険」を設けたが、全ての元請けが入っているわけではない。
万博協会は「民間同士の契約で限界もあるが、情報収集し、解決に向けた働きかけを行っていきたい」としている。
参照元:Yahoo!ニュース