大谷翔平選手の愛犬にあやかった?「デコピン」商標出願が激増、登録は認められるのか

大谷翔平選手の愛犬にあやかったとみられる「デコピン」という商標出願が増えている。
デコピンは2023年11月にメディアで登場以降、大谷選手とともに大人気となっている。
商標登録を検索できるサイト「J-PlatPat」で「デコピン」を検索すると、2023年12月から2025年2月にかけて、18件もの商標が出願されている。
そのジャンルは、おもちゃやゲーム機などの「38類」、被服や履き物などの「25類」、化粧用具や食器などの「21類」があり、多種多様だ。
これら18件については現在、「審査中」や「審査待ち」となっており、まだ登録されてはいない。
人物名については原則的に商標登録は認められないことから、「大谷翔平」の出願は少数で、2件の出願しかなかった。
では、その愛犬の名前である「デコピン」については、他人であっても商標が認められる可能性はあるのだろうか。
知財法にくわしい冨宅恵弁護士に聞いた。
——「大谷翔平」など有名人の名前を商標登録することはなぜ認められないのでしょうか。
商標法では、有名人であるか否かを問わず、他人の肖像や氏名は商標登録を受けることができず、著名な芸名であっても受けることができないとされています。 これは、商品や役務(サービス)を提供するにあたり、本人が出所を表示するものとして、自身の肖像や氏名などを使用することができないと困るからです。
商標法において、商標を登録しようとする者と第三者とを調整しているわけです。
——有名人のペットの名前、今回のケースですと「デコピン」について、商標登録が認められる可能性はありますか。
ペットは、法律の世界では「物」として取り扱われています。
そして、人がペットを飼っているという状態は、法律では、人が「物」を所有していると評価されます。
民法では、所有権とは、対象となる「物」を自由に使用する、収益を得る、処分する権利であると規定されており、「物」の姿や名称を支配することができると規定されていません。
過去に、有名な競争馬の姿や名称を、馬主の了解なく使用してよいか争われた裁判がありましたが、最高裁は、競争馬は「物」であり、馬主の競走馬に対する所有権には、姿や名称を排他的に支配する権利がないので、姿や名称を使用することが認められると判示しました。
そして、商標法は、著名なペットなどの名称の登録を否定していません。
なお、人のおでこを指で弾く「デコピン」という言葉もあり、かならずしも大谷選手にあやかっているわけではない、というケースもありえます。
いずれにせよ商標登録が認められる可能性があります。
——もしも審査中あるいは審査待ちの「デコピン」の商標登録が認められた場合、デコピンの飼い主である大谷選手がデコピングッズを作って販売することは困難になるのでしょうか。
商標権というのは、あくまで商品や役務の「出所」を示すものであり、そういうものとして使用された場合に差止めや、損害賠償の対象となります。
たとえば、何らかの商品に、デコピンの姿の写真を印刷し、その下に、「デコピン」と記載されていても、これは、写真や絵の対象が大谷選手のペットのデコピンであることをしているだけですので商標権を侵害することにならない可能性が高いです。
大谷選手はもちろん、第三者であってもできるわけです。
ただし、デコピンを表した絵は、著作物となりますので、これを複製して使用した場合には、著作権侵害になります。
——大谷選手とデコピンを一緒に描いたりした場合はどうなるのでしょうか。
大谷選手の容姿や絵については、「デコピン」と別に考えなくてはなりません。
最高裁では、著名な人物については、容姿や氏名を商用利用されない権利である「パブリシティ権」を認めています。大谷選手は、極めて著名な人物であるため、この「パブリシティ権」を有しており、自身の容姿や氏名を商用利用されたときに、差止めや損害賠償を請求することができます。
また、たとえばカメラマンが撮影した大谷選手の写真をもとに描いた絵は、パブリシティ権とは別に著作権の対象となりますので、差止めや損害賠償の対象となります。
参照元:Yahoo!ニュース