世界の太陽光発電、今夏にも原子力を一時上回る見通し エネルギーミックスに転換点

世界の太陽光発電所による電力生産量は、今年の夏の期間中、初めて原子力発電所を上回る見通しだ。
太陽光発電が世界のエネルギーシステム内で成長を続ける上で、重要な節目となる。
太陽光発電は日中のみ可能であり、年間ベースの発電量としては依然として風力、原子力、水力に大きく劣る。
ただ1年の間で発電量が最大化する時期には、ほかの多くのクリーンエネルギーを上回りつつあり、すでに昨年の北半球の夏には世界の風力発電量を超えることもあった。
太陽光発電が今夏、一時的に原子力発電を上回る見通しとなったことで、ピーク時の発電量において太陽光発電がまだ追い越していない主要なクリーンエネルギーは水力だけになった。
この10年間で電力会社が電力網に接続した太陽光発電の発電容量は、他のエネルギーの2倍を上回る。
これは太陽光発電が比較的低コストであり、電力網接続までの時間が短いことが主な理由だ。
エネルギー系シンクタンクのエンバーによると、2024年時点で世界の電力システムに組み込まれた商用規模の太陽光発電容量は1866ギガワット(GW)に達した。
2014年時点の10倍に相当し、この期間中の増加としては主要電源の中で最大となった。
風力発電は3.2倍と太陽光に続く大きな伸びを示したが、それ以外は2倍未満にとどまった。
2024年時点で、発電容量の総計において太陽光は主要電源の中で3位に位置している。
石炭火力(2174GW)や天然ガス(2055GW)には及ばないものの、水力(1283GW)や風力(1132GW)を上回っている。
太陽光の発電容量は着実に増加し、10年の間毎年、ピーク時の太陽光発電量の記録を更新。
エンバーによると、商用規模の太陽光発電量は2020年以降、年平均で25%の成長を続けている。
今年の第1・四半期の太陽光発電量は前年同期比で34%増加した。
複数の主要地域で、広いエリアに発電設備が増設されたことが背景だ。
世界の太陽光発電所の約4分の3は北半球に集中している。
9月以降、北半球においては日照時間が減少するため、太陽光発電量は250テラワット時(TWh)を下回る見通しだ。
それでも今夏には、太陽光発電が原子力を初めて上回る見込みだ。
電力事業者にとって太陽光発電量の着実な拡大は、好機であると同時に課題でもある。
太陽光発電所は出力ピーク時には過剰な電力を供給する一方で、夜間には発電が完全に停止する。
このため、他の電源とのリアルタイムでの需給調整が不可欠だ。
同時に、太陽光発電のシェア拡大により、各国の電力網は再生可能エネルギーの供給変動に対応できるよう、送電網の近代化を迫られている。
電力事業者は蓄電池システムのコスト低下を受けて、不要時に余剰電力を蓄電し、需要が高まった際に放電する「ソーラー・プラス・バッテリー」モデルを導入しつつある。
これにより、電力会社は石炭や天然ガスといった化石燃料の使用量を抑制できるとともに、燃料価格の高騰時にコストを削減し、排出量の削減にも寄与できる。
今夏、太陽光発電が過去最高の出力を記録すれば、電力会社はピークの時間帯に原子力発電を一時的に抑制し、夜間に再度稼働させるといった調整も可能になる。
この運用により、電力会社は化石燃料への依存をさらに抑制しつつ、クリーンエネルギーの活用を最大化することができ、今後の太陽光発電の拡大と利用促進に向けた基盤が形成されることになる。
参照元:REUTERS(ロイター)