富山湾シロエビ激減のなぜ?能登半島地震で起きた海底「乱泥流」の正体 水中ドローンが捉えた痕跡

シロエビを撮影した画像

水中でいったいどんな現象が起きているのだろうか。

富山湾の海底で起きた「地すべり」が引き起こした乱泥流がシロエビ漁に打撃を与えている。

海中で起きている現象が、富山湾の海底環境を一変させ、名産であるシロエビの漁獲量を激減させている。

この現象の正体とはいったい何なのだろうか。

富山大学の研究チームが海中災害の謎に挑んでいる

富山大学 立石良准教授「黄砂や花粉のイメージが一番強いかなと思うんですけど、それのかなりひどい状態だと思っていただければ、そこに住むのは難しいよね…」

研究チームが調査しているのは、去年1月の能登半島地震の影響で発生した富山湾での海底地滑りだ。

去年10月から12月にかけて富山大学の研究チームが水中ドローンを使って調査したところ、水深約350メートルの海底に大きな岩石のブロックが散乱する様子などを確認した。

水中ドローンが初めて海底地滑りの痕跡を捉えることに成功した。

この海底地滑りの影響を受けているとみられるのが “富山湾の宝石” と呼ばれるシロエビだ。

地震があった昨シーズンの水揚げ量は、例年の2割程度に落ち込み、今シーズンも不漁が続いている。

県水産研究所によると、4月の漁獲量は32トンと例年の4割以下になっており、新湊漁協では一時休漁を余儀なくされている。

立石准教授らの研究チームは今年3月、海底地すべりのメカニズム解明に向けて海底の堆積物の採取調査を行った。

採取された堆積物からは、海底の環境が大きく変化していることが明らかになった。

富山大学 立石良准教授「一番特徴的なのはこの海底コアのこの部分なんですけど、ここに白い点々があると思うんですけど、これ実は粗い堆積物の塊で、かなり粗いものなんです。荒いものがだんだん上に向かって減っていく。この辺でこうスパッとなくなる、というような様子が見えるんですが、その下もかなり乱れています」

立石准教授によると、海底地滑りにより海底の岩石ブロックが崩壊し、その衝撃で土砂が周囲の堆積物を巻き上げ、流化物などを広範囲に拡散する「乱泥流」という現象が発生したという。

研究チームが撮影した映像には小規模な乱泥流が映っているが、竜巻のようなものが水中で発生し、海底の柔らかい堆積物を巻き上げている様子が確認できる。

立石准教授は去年の地震では、この10万倍から100万倍規模の乱泥流が発生したと推定している。

富山大学 立石良准教授「かなり広い範囲に拡散する現象なので、広い範囲で、エビが獲れなくなったり、カニが獲れなくなったりということの説明がつくのかなと思っています。例えるなら公害のような、大気汚染のような状態と同じだと思っていただければいいかなと。非常に呼吸しづらいとか、とにかく生活しづらい状態にはなってくるだろうと」

堆積物が巻き上げられて海水と混ざり合い、粘り気のある泥水になったことで、シロエビやベニズワイガニの生息環境が悪化したとみられる。

立石准教授は、乱泥流による富山湾の海の幸への影響はまだしばらく続くと見ており、引き続き水質調査などを行いメカニズムの解明に努めたいとしている。

富山湾の豊かな海の幸を取り戻すため、研究者たちの調査は続く。

参照元:Yahoo!ニュース