首相、一時は前のめりでも 夫婦別姓実現遠く 「異例中の異例だ」反対の党議拘束案浮上

選択的夫婦別姓制度の今国会での導入が極めて困難になった。
立憲民主党が提出した導入法案は、衆院法務委員会で審議入りできていない。
導入に慎重な日本維新の会が19日、旧姓の通称使用を法定化する法案を衆院に提出。
いずれも多数を形成できる見通しはない。
推進を掲げてきた石破茂首相が率いる自民党は、党内議論をまとめずに独自法案を見送る。
野党案が成立しないよう反対の党議拘束をかける案まで浮上する。
法制審議会が導入を答申して29年。
参院選を控え思惑が交錯する立法府は宿題の答えを出せそうにない。
維新の法案は戸籍法を一部改正し、希望者は旧姓を戸籍に追記できるようにする。
婚姻に伴う改姓の社会生活上の不利益を解消するのが狙い。
藤田文武前幹事長は「法的安定性もあるし、日常生活の困り事解消という意味では必要十分な設計だ」と自信を見せた。
立民は4月、1996年の法制審案に近い内容で導入のための民法改正案を提出したが、野党の足並みをそろえられないまま。
国民民主党にも独自に法案提出の動きがある。
現時点で立民案も維新案も審議入りの日程は決まっておらず、採決に至っても過半数を得られない。
法案提出を控えた維新中堅は先週までひそかに自民幹部に接触していた。
「尻込みしてないで、うちの案に賛同しませんか」と水を向けた。
自民幹部は保守層の存在や自民支持の政治団体の名前を挙げて返答したという。
首相は、昨年の総裁選で「選択的に姓を選べるべきだ」と導入に前のめりだった。
今年1月の衆院本会議では「いつまでも結論を先延ばししてよい問題とは考えていない」と答弁した。
時を追うごとに発言は聞かれなくなる。
小泉進次郎元環境相ら党内に一定数いる推進派もトーンダウンした。
自民内の「氏制度の在り方に関する作業チーム」の意見集約は進まず、「結論を急ぐ必要はない」との声が大きくなった。
自民は導入を推進したい連立を組む公明党との与党協議にも応じていない。
背景には、保守層への配慮とともに、別姓に否定的な慎重派も一枚岩ではない事情がある。
稲田朋美元防衛相は16日、衆院法務委で通称使用の拡大は「限界がある」として独自案を披露した。
自民内では野党案が採決に至った場合、反対の党議拘束をかける案もある。
ある幹部は「議員立法ではなく、(政府が提出する)閣法が望ましい」と強調し始め、党議拘束を材料に推進派をけん制する。
党内手続きを経て、採決での所属議員の投票行動をそろえる党議拘束。
自民は、かつて臓器移植法で個人の死生観などを理由に党議拘束を外した例がある。
他党の法案について反対で縛るのは「異例中の異例だ」(自民国対幹部)。
そこまでするのは、まとまった数が野党案に賛成するのを防ぐため。
関係者は「党内統治が利いてないように見える。参院選前に示しがつかない」と本音をささやく。
参照元∶Yahoo!ニュース