火垂るの墓、国内でもネトフリ配信へ 海外絶賛、響いた戦争のリアル

戦後80年となる今夏、スタジオジブリのアニメ映画「火垂(ほた)るの墓」(1988年、高畑勲監督)のネット配信が、国内で初めて始まる。
配信元のネットフリックスが15日、発表した。昨秋から海外での配信が先行していたため、日本のファンからは配信を切望する声が上がっていた。
ジブリ作品としても国内初のネット配信となる
日本での配信は、7月15日から。
作家・野坂昭如氏(1930~2015)が太平洋戦争における神戸空襲の体験をモチーフに書いた同名小説が原作で、敗戦前後を懸命に生きる戦争孤児の兄妹の姿を描く。
映画の制作元は高畑監督が所属していたスタジオジブリだが、著作権は原作文庫版の出版元である新潮社が持つ。
ネトフリでは昨年9月16日、日本以外の約190カ国・地域で配信し始めた。
開始1週間で計150万ビュー(総視聴時間を作品の時間で割った数値)を記録し、非英語映画の世界ランキングで7位に。
英語圏のレビューサイトでは「二度と見たくない傑作」「ウクライナやガザの状況と重なる」などと数多くの感想が書き込まれた。
新潮社によると、日本でも、と望む声がSNSを中心に相次いだという。
実際、海外配信が始まった月のDVDの国内売り上げは、前月の5倍ほどに急増。
国内配信に慎重だった同社の姿勢を変えるきっかけのひとつになったという。
これまで、ジブリ作品を扱ってきた日本テレビ「金曜ロードショー」で夏に放送されていた時期があったものの、高畑監督が亡くなった直後の2018年4月の追悼放送を最後に途絶えていた。
映画館などでの復活上映を個別に許諾した程度だったという。
新潮社は近年、動画コンテンツ環境のデジタル化の流れも受け、ネット配信に向けて検討を続けていたが、海賊版対策の難しさなどが壁になっていた。
きっかけとなったのが、昨年5月、カンヌ国際映画祭で開いた試写会。
各国の関係者から配信希望の問い合わせが相次いだ。
これまでのような単発の放映ではなく、国内外での「配信解禁」への流れが生まれたという。
ネトフリ日本法人でコンテンツ部門を統括する坂本和隆さん(42)は「30年以上前の作品がこれだけ視聴されるのは異例。私自身も子どもの時に見たことがあったが、今改めて見ると、悲惨さだけでなく、生きる喜びが丁寧に描かれていると感じた」。
日本配信に向けては、「戦争を体験していない視聴者が多いなか、この作品をきっかけに『記憶』をつなぐバトンリレーが広がっていってほしい」と話した。
参照元:Yahoo!ニュース