“水銀”を含む体温計や血圧計は可燃ごみで捨てないで! たった50グラムで焼却炉が約1か月半も稼働停止に「このぐらいなら…」の軽い気持ちが思わぬ事態を招くことも

名古屋市中川区にある市民プールが、4月から利用できない状態になっている。
理由は隣のゴミ処理場で起きた、あるトラブルだった。
一体、何が起きたのだろうか?
中川区の「富田北プール」。
開場時間のはずなのに閑散としていると思ったら、入口に置かれた看板に「臨時休場」と書かれていた。
よく市民プールを利用するという人たちからは「すごく寂しい。体を使いたい」「急きょ使えなくなってしまったということで残念」と、落胆する声が上がっていた。
なぜプールが使えなくなったのだろうか。
その理由は意外なものだった。
実はこのプール、隣接するごみ処理場「富田工場」のごみを燃やす熱を利用した温水プールなのですが、工場内にある3つの焼却炉がすべて稼働停止となり、熱源が途絶えてしまった。
焼却炉が止まったのは、ある有害物質が基準値を超えてしまったためだった。
名古屋市富田工場 大島祥弘 工場長:「水銀使用製品が混入したようで、ごみとして焼却した際に、排ガス中の水銀濃度が上昇した」
今年の3月から4月にかけて、水銀を含む製品が可燃ごみとして捨てられた可能性がある。
量は、最低でも水銀を使った血圧計1個、または体温計50本分に相当するという。
水銀血圧計1個に含まれる水銀の量は約50グラムだ。
富田工場には3つの焼却炉があるが、それぞれの炉で排ガス中の水銀濃度の基準値を超え、3月27日に2号炉、3月28日に3号炉、4月18日に1号炉がごみ処理を停止した。
名古屋市によると、工場内にある複数の焼却炉のうち1つだけが停止することはこれまでにもあったが、水銀濃度の上昇が原因で工場全体が稼働停止になるのは今回が初めてだという。
富田工場が稼働停止中、ごみの焼却は他4つのごみ処理場で行っていて、ごみ処理への影響は出ていないものの、年間約6万2000人が利用するプールは臨時休場に。
再開を楽しみに待つ人もいるが、市は5月末まで富田工場の操業を停止する予定としている。
水銀を含む製品の製造や輸出入は、2021年に原則として禁止されたが、蛍光ランプ、体温計、血圧計などは、現在も水銀が使用された製品が一般家庭で使われていることもあるようだ。
こうした水銀を含む製品が可燃ごみと一緒に出されると、わずかな量でも大きな影響を及ぼしてしまう。
水銀が残っていると排ガスの水銀濃度が上がり、再び稼働停止の恐れがあるため、工場を1か月半ほど停止し、焼却炉の中に人が入って手作業で水銀を含む灰を取り除く必要がある。
大気中の水銀濃度が上昇すると、どのような影響が出るのだろうか。
環境省が2014年に公表したデータによると、「水銀蒸気の吸入は、消化器官系、免疫系、肺及び腎臓に害をおよぼす」という。
排ガスの水銀濃度の法規制値は50μg/㎥N以下ですが、名古屋市は独自に自主管理値を設定していて、30μg/㎥Nを超過した場合、すぐに焼却炉を停止するとしている。
焼却工場では24時間体制で排ガス中の水銀濃度を監視していて、今回の富田工場のケースでは、自主管理値を超過した時点で焼却炉を停止したため、大気環境への影響はないという。
水銀以外でも、ごみの分別が正しくできてないと危険なことになるケースも。
今年4月、大口町の粗大ごみ処理施設で火事があった。
原因は、モバイルバッテリーなどに使われるリチウムイオン電池が、粗大ごみに出されたことだ。
この粗大ごみ処理施設は5月9日時点で停止中となっている。
名古屋市の場合、水銀を含む製品は各区にある環境事業所に持ち込むと処理することができる。
捨て方は自治体により異なるので、必ず確認して正しく分別しよう。
参照元:Yahoo!ニュース