SNS「不便」 それでも飲食店が“スマホ注文”導入する理由は? 実は省人化以外のメリットも 専門家に聞く

スマホで商品を注文している人

多くの飲食店ではメニューや注文用のタブレット端末が置かれており、客が口頭もしくはタブレット端末で料理を注文するのが一般的だ。

そんな中、客のスマホを通じて料理の注文を受け付ける、いわゆる「スマホ注文」を導入する飲食店が増加しつつある。

スマホ注文の仕組みは、来店客が席に設置されている二次元バーコードをスマホで読み取り、その際に表示されるメニュー画面を通じて料理を注文をするものだが、SNS上では「不便」「スマホのバッテリーが減る」「ギガを消費する」「スマホ持っていない人への配慮も大事にしてほしい」という内容の声が上がっている。

スマホ注文を導入する飲食店が増えているのはなぜなのだろうか。

スマホ注文の導入により、飲食店にとってどのようなメリット、デメリットがあるのだろうか。

飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんに聞いた。

Q.客のスマホを通じて料理の注文を受け付ける、いわゆる「スマホ注文」を導入する飲食店が増加していますが、なぜなのでしょうか。スマホ注文導入のメリット、デメリットも含めて教えてください。

成田さん:客のスマホで料理の注文を受け付ける飲食店が増加しているのは、いくつかの複合的な要因によるものです。

特に大きな要因として『人手不足の深刻化』が挙げられます。

客がスマホで料理を注文できるため、店員が席まで注文を聞きに行くという手間を減らすことができます。

それにより、店員の省人化が可能となり、人手不足の解消につながります。

また、コロナ禍の経験やプライベートな空間を重視する若年層の増加により、対面での接触を減らしたいというニーズが増えているのも要因です。

意外に思うかもしれませんが、スマホ注文に関して、客がスマホで気軽にメニューの閲覧や追加注文ができることで、実際に客単価が向上した事例が多く報告されており、飲食店が収益アップを期待して導入するケースも見受けられます。

これらの話を踏まえると、飲食店がスマホ注文を導入するメリットは『人手不足の解消』『顧客満足度の向上』『収益アップ』です。

また季節メニューや期間限定メニュー、価格改定なども、アプリ上で即時に反映できるため、印刷物のコスト削減や柔軟なメニュー変更などにも対応できます。

このほか、店員が注文を聞き間違えることによるヒューマンエラーが減るため、客が注文した料理とは違う料理を運んでしまうというミスをなくすことも可能です。

スマホ注文を導入する大きなデメリットとしては、『高齢者やスマホの操作に不慣れな人への対応が必要になる』『コミュニケーション不足による顧客満足度の低下』『スマホ注文の導入により、初期費用や月額料などのコストがかかる』といったことが挙げられます。

また、通信障害が発生してスマホが使えなくなったというトラブルが発生した場合の対応策を検討しておく必要があります。

Q.スマホ注文を導入する飲食店の中には、高齢の人が注文のやり方が分からず、店員を呼んで口頭で注文するケースもあるようです。この場合、客が不便に感じて再来店しない可能性はあるのでしょうか。

成田さん:高齢者やスマホの操作に不慣れな人がスマホ注文を不便に感じ、再来店しない可能性は大いにあると考えられます。

そうならないためにも、先述のように店側はそのような客をしっかりサポートする準備が必要になります。

例えば、『スマホがなくても口頭で対応できます』という内容の案内を店内に掲示したり、客のスマホ注文をサポートするスタッフを配置したりすることなどです。

スマホ注文がすべての客層にとって最適とは限らないため、丁寧なサポート体制の構築が重要課題になるでしょう。

Q.ちなみに、飲食店がスマホ注文をやめ、店員が直接、客の注文を聞くスタイルに戻したとします。この場合、店にとってどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

成田さん:飲食店がスマホ注文をやめ、店員が直接、客の注文を聞くスタイルに戻した場合のメリットは、高齢者やスマホの操作が不慣れな人を含めた幅広い客層に対して、客との会話の中で柔軟な対応ができるため、顧客満足度の向上が見込めます。

デメリットとしては、人件費の増加や店員による注文の聞き間違いといったヒューマンエラーの増加、回転率の低下などで収益が減る可能性が考えられるでしょう。

店側と客側のどちらにもメリットが見込めるように、しばらくは『スマホ注文』と『口頭注文』のどちらも対応できるハイブリットな店づくりが必要だと私は考えます。

参照元:Yahoo!ニュース