アフリカに目を転じる米国、コンゴで「ウクライナ型」鉱物協定模索か

コンゴ民主共和国の国旗を撮影した画像

ウクライナとの鉱物資源協定が注目を集める一方で、米国はアフリカでより重要性の高い鉱物資源取引を進めようとしている。

反政府勢力との激しい戦闘が発生しているコンゴ民主共和国(旧ザイール)政府は2月、トランプ政権にウクライナ式の鉱物資源開発の提案を持ちかけた。

米政府はこれを受け、1994年のルワンダ虐殺に端を発したこの紛争を終結させるため、活発に交渉を進めている。

コンゴでは1月下旬、ルワンダが支援する反政府勢力「3月23日運動(M23)」が東部で進軍し、主要都市を掌握していた。

しかし、米国の仲介努力もあって和平合意の機運が高まり、コンゴとルワンダの間で早ければ今月にも合意の成立が期待されている。

この合意には、両国と米国との間での鉱物に関する協定が含まれる可能性がある。

コンゴの北キブ州と南キブ州には豊富な鉱物資源があり、スズ、タングステン、コルタンといった金属の重要な供給源となっている。

しかし、これらの地域には多くの問題がある。

M23は2月にコンゴ東部の主要都市ゴマとブカブを制圧。

3月初旬には西へ進軍し、ビシエ・スズ鉱山のあるワリカレに到達した。

ビシエは産出量世界4位の世界有数のスズ鉱山で、手堀りによる採掘から脱却して近代的運営の導入に成功した、コンゴの「倫理的採掘」の成功例として知られている。

ビシエ鉱山を経営するアルファミン・リソーシズ社は、反乱軍の接近により操業を停止し、職員らを避難させた。

これによりスズ価格が高騰し、コンゴ政府の収入源が脅かされた。

ワリカレの陥落を受け、米政府とコンゴ、ルワンダ間の直接交渉が加速。

その結果、M23戦闘員はカタール仲介による和平交渉を前に、善意の印として同地域から撤退した。

アルファミンは4月15日にビシエの操業を再開した。

ビシエ鉱山は北キブ州と南キブ州で唯一の公式に認められた鉱山で、その他は手堀りを中心とした零細採掘の鉱山だ。

シンクタンク国際平和情報サービス(IPIS)の研究者らは、2009年以降、コンゴ東部で2800以上の採掘現場を調査し、21年から23年にかけて約13万2千人の鉱員が働いていたと推定される829の採掘中の鉱山から情報を収集した。

調査対象の採掘現場のうち、85%が金を採掘しており、残りの大部分は「3T」鉱物、すなわちスズ、タングステン、タンタル(コルタン鉱石)の採掘に従事していた。

IPISの推計によれば、これらの採掘現場の鉱員の61%が「武装介入」の影響を受けている。

「武装介入」とは、地域で活動する多数の武装集団による強制的な賃料徴収を指し、コンゴ軍もその例外ではない。

この問題は長年にわたって続いてきた。

各国はコンゴを念頭に、武装勢力など紛争の資金源として利用される「紛争鉱物」を制限する法律を導入。

米国企業に責任ある調達規則の遵守を求めた2010年の米国の金融規制改革法(ドッド・フランク法)はその一例だ。

しかし、現場の状況はあまり変わっていない。

M23反乱部隊も鉱物取引に関与しており、ルバヤのコルタン鉱石を採掘する鉱員らは反乱軍に15%の「税金」を支払っていることが、ロイターによる反乱軍支配地域の取材で明らかになった。

コンゴ東部の国境を越えて流出する鉱物は、コンゴ政府だけでなく、西側の買い手にとっても大きな問題であり、紛争鉱物が法律や国際的な規制に従うべき公式供給網に混入する恐れが出ている。

コンゴの鉱物資源の豊富さは疑いようがなく、その潜在的な利益はウクライナとの取引よりもはるかに早期に回収可能とみられている。

ルワンダ、コンゴ、M23の間で和平合意が成立すれば、キブ州に秩序を取り戻すための重要な第一歩となるだろう。

しかし、この地域では他にも多くの武装集団が活動しており、米国がどの程度まで軍事的関与をしてこれらの集団を抑止する意志があるのかは不透明だ。

それでも、その見返りは非常に大きなものだ。

コンゴは世界有数の銅とコバルトの産地でもあり、これらは大湖沼地域から遠く離れた南部のカタンガ州で生産されている。

この地域の鉱物資源は主に中国の企業によって管理されており、原材料と完成した金属の両方が中国へ輸送されている。

西側諸国は中国の影響を弱めたいと考えている。

米国はコンゴ民主共和国とザンビアの資源を大西洋岸にあるアンゴラの港に運ぶ輸送路「ロビト回廊」の整備を支援しており、多くの投資が同プロジェクトの鉄道再整備事業に投入される予定だ。

アンゴラのロビト港とコンゴの銅鉱山地域を結ぶ同鉄道は経済発展を促進し、コンゴの金属を西側に輸送する新たなルートを提供することが期待されている。

一方の中国は、タンザニアとザンビアを結ぶ鉄道を14億ドルで改修する計画を進めている。

この鉄道は、中国が生産した金属を東に輸送し、ダルエスサラーム港へ運ぶ役割を担う。

これまで鉄道は、アフリカ中央部で繰り広げられる東西間の鉱物開発競争を左右してきた。

コンゴ北部で鉱物と安全保障を巡って米国と新たな合意が成立すれば、この戦略的競争で新たな局面が開かれ、コンゴの歴史に新しい章を刻むことになるだろう。

参照元:REUTERS(ロイター)