なぜ?大阪で中国からの移住者が急増中! 中国に比べ日本は安い?生活に余裕?中国からの逃げ出し「潤」とは?

中国経済は、長引く不況に「トランプ関税」も加わり、苦境に立たされている。
そこでいま、中国を脱出しようと日本に移住する人が急増している。
中でも、人気が高いのは大阪。
その背景には一体何があるのだろうか?
中国では「潤(ルン)」という隠語がある。
「中国から逃げ出す」ことを指していて、英語のrun(走り出す)に由来があるとされ、新型コロナウイルス禍でのロックダウンの厳しさからこの動きが強まったとみられる。
日本に在留する中国人の数は2024年末時点で約84万人となり、過去最高だった。
「潤」でやってくる人は中流以上の人で、年齢層が高く(30~50歳代が主)、日本で中国人同士のコミュニティを築くので、日本語は上達しないケースが多いという
移住先として日本が選ばれやすい理由は、
・中国から近いこと
・円安で物価が安いこと、
・社会保障や医療体制が充実していること
・子どもの教育面での条件の良さ
が挙げられている。
中国の教育事情は厳しく、大学の統一入学試験「高考(ガオカオ)」は“世界で最も過酷な一発勝負”といわれる。
しかも、その難関を突破し大学に入学しても、大卒の新卒者の就職内定獲得率は45.4%と高い水準とは言えない。
家計の総支出に占める教育費の割合は、日本が2.2%なのに対し、中国は7.9%を占める(米スタンフォード大調べ)。
中国での教育費は、大学進学を目指す小学6年の場合で年間約1200万円かかるとされ、それと比べると日本は「コストパフォーマンス」が良いと考える中国人が多くいるようだ。
2年前に来日したAさんの娘2人も、大阪の公立学校に通っている。
中学2年の長女は、来日前は日本語がほとんどできなかったが、去年の成績はほとんどが5段階評価の「5」。
クラスの百人一首大会では準優勝を修めた。
Aさんは「中国の一流大学を目指すと100%の努力が必要だが、東京大学は70%でいける。残りの30%で部活や社会体験をさせたかった」と話した。
長女は日本での生活について、「中国にいた頃は自由な時間が少なかった。いまは部活や習いごとができて楽しい」と話している。
近年、中国から日本へ居を移す人は、とりわけ大阪で増えている。
大阪市の中国人の居住者数は、2010年に2万7828人だったところが5万7396人となり、2倍以上に増えた。
この背景には、2016年に始まった「特区民泊」という制度がある。
「特区民泊」は国家戦略特区にあり、通常の民泊と比べて営業日数などの制限が緩和されている。
この特区民泊は、大阪に全国の95%が集中していて、約4割が中国系の経営者という。
民泊を経営すると経営管理ビザが取得できる。
このビザは資本金500万円以上、従業員2人以上などの条件を満たせば、3カ月から5年の在留許可が得られ、比較的取得が容易だ。
つまり、中国から逃げ出したいという動機があり⇒子どもの教育面などで日本に白羽の矢が立ち⇒そのためには日本のビザ取得が必要で⇒経営管理ビザを取って特区民泊を経営⇒特区民泊の多い大阪に移住、という「潤」の図式が出来上がっている。
中国人からの移住者が増えることでのメリットは、中国人の起業家や投資家が増えると日本経済の活気が生まれるということ。
デメリットとしては、民泊の乱立、局地的な不動産価格の高騰、受験競争の激化が挙げられる。
【中国・東南アジア専門ジャーナリスト・舛友雄大さんの解説】
日本は、生活のクオリティが高い割に、物価が安いと思われています。
教育面でも、中国ではいい大学に行って、いい職に就くことが成功、という価値観がしっかりありますが、それに比べると日本はまだ余裕があると感じられているのでしょう。
特区民泊については、大阪では中国系の不動産会社が、500から1000の物件を一気に手がけて所有し、運営しているというケースもあります。
ビザを巡っては、欧米の投資家ビザがここ数年縮小傾向なのに対し、日本は緩和しているので、比較的取りやすくなっているといえます。
日本の経済的メリットでは「潤マネー」という言葉も生まれるほど、中国人富裕層をターゲットにしたビジネスが盛り上がっています。
一方で、外国人による不動産取得の方法について、日本の現状の制度がうまく機能しているのかチェックする必要があると思います。
参照元:Yahoo!ニュース