「国境離島」保全へ測量強化方針、レーザーで地形変化を自動比較 領海やEEZ維持につなげる狙い

政府は、日本の領海や排他的経済水域(EEZ)の基点となる国境離島の測量調査を強化する。
今年度からレーザーによる測量を開始し、地形の変化を自動で比較できる「地形照合システム」を2026年度までに整備する方針だ。
浸食などの影響を早期に把握し、領海やEEZの維持につなげる狙いがある。
調査は内閣府と国土地理院が連携して進め、航空機からの写真撮影を含め、28年度までに日本が保全・管理する473島全ての地形データを取得する。
これまで国境離島の調査は、おおむね10年ごとに航空写真や衛星画像を撮影して目視で比較したり、現地調査を行ったりして地形の変化を確認していた。
今後は航空写真の撮影頻度を5年ごとに引き上げ、特に波などによる浸食の影響を受けやすい約25島については、レーザー測量でより詳しいデータを入手する。
レーザー測量は、ヘリコプターからレーザー光を島に照射し、跳ね返ってくる光を測定して島の形状などを精密に計測するものだ。
東シナ海に浮かぶ肥前鳥島(長崎県五島市)を構成し、周辺に好漁場が広がる「北小島」「中小島」「南小島」などを対象とする。
新たなシステムでは、写真やレーザー測量で得たデータを蓄積し、5年後をめどに再び測量したデータと自動で比較して浸食などの地形変化や兆候を客観的に測定する。
早期に変化を察知できれば、島を保護するための保全工事にも早く着手できる。
日本最南端の沖ノ鳥島(東京都)では、浸食を防ぐため、護岸工事が施されている。
国境離島は本土から遠く離れ、実態把握が遅れがちだ。
政府が測量の強化に乗り出すのは、島の消失が確認される例が相次いだためだ。
北海道猿払村沖にあった「エサンベ鼻北小島」は18年、波や流氷による浸食で海面から見えなくなり、政府が23年に「島ではない」と結論づけた。
政府は全国の国境離島を484島としていたが、23年に14島減り、新たに3島追加した調査結果を発表している。
内閣府の担当者は「国境離島を失えば、領海やEEZの範囲が狭まり、漁場や海底資源などの海洋権益を損なう恐れがある」と指摘している。
参照元:Yahoo!ニュース