毛をむしる、食欲減退… 犬や猫にも「五月病」? その原因と対処法

五月病をイメージした画像

入学や就職、引っ越しなど生活の変化が多い新年度を迎えて1カ月あまり。

新生活へのストレスなどが原因で、心身の不調が表面化する「五月病」を患う人も少なくないが、ペットの犬や猫も生活の変化に影響を受けるケースがあるという。

飼い主は、どんなことに注意すべきなのだろうか。

大学の動物医療センターで犬や猫の問題行動を治療した経験を持ち、現在はペットの往診専門クリニックを運営する獣医師、椎木亜都子(あつこ)さんに原因や対処法を聞いた。

新年度は新しい環境や生活のリズムに慣れない中で、人は知らず知らずのうちにストレスを感じている。

特に、ゴールデンウイーク明けは一度ほぐれた緊張が再開し、不眠や無気力になったり、頭痛や胃痛など心身に不調が表れたりして、何となく「学校に行きたくない」「仕事に集中できない」――と感じる人も少なくない。

これらの症状を伴う「五月病」は、正式な病名ではないが、誰にでも起こりうるとされる。

では、人と生活を共にする飼い犬や猫はどうなのだろうか。

椎木さんによると、あくまで個体差はあるが、犬や猫も家族構成や飼い主の生活リズムの変化にストレスを感じることがあるという。

引っ越した場合は、間取りや家具の位置が変わるため、縄張り意識が強い犬や猫は、食欲減退や下痢などの体調不良や問題行動につながるケースもある。

ときには皮膚が荒れるほど毛をむしったり、自分のしっぽを追いかけて血がにじむほどかんだりするという。

また、トイレの場所を理解していても別の場所で排せつしたり、飼い主をかんだり威嚇したりと攻撃的になることもあるそうだ。

春先はアレルギー症状が出やすく、皮膚が荒れたり、毛が抜けやすかったりする季節ではある。

だが、声かけにも応じないほど夢中で毛をむしっていたり、睡眠や食事の時間を忘れて体をなめ続けたりしている時は、注意が必要だという。

ストレスを緩和させる方法の一つは、エネルギーを発散させることだ。犬は散歩でリフレッシュさせてあげることができる。

また、お気に入りのおもちゃを使った室内遊びは犬、猫どちらにもおすすめだという。

散歩の時間を取れなくても、飼い主との十分なコミュニケーションにつながり、工夫次第でストレスを軽減できる。

トイレではない場所で排せつしたり、家具やドアをかんで壊したりしたときに、飼い主はついきつく叱ってしまいがちだが、これは最もやってはいけないことだと注意を促す。

「イライラしてつい怒ってしまうが、例えば、床に排せつしてしまったことを叱ると、排せつ自体がダメなのかと思って悪循環に陥りやすい。何事も無かったように片付け、きちんとできたときは褒めてあげてほしい」と話す。

一方で、しっかり食べる、寝る、遊ぶという基本的な生活ができないくらい症状がひどい場合や、自傷行為で体が傷ついている場合は、すぐ動物病院などに受診・相談することを勧める。

最後に椎木さんはこうアドバイスを送る。

「飼い主もこの時期は新しい生活に慣れるのに精いっぱい。今まで静かに留守番していたのに、ほえ続けたり、家の中を荒らしたりしていつもと様子が違うと、何とかしようと無理をしがちだ。でも、そうした気持ちは犬や猫にも伝わる。飼い主もリフレッシュしつつ、気持ちを大きく構えて犬や猫と一緒に新生活に慣れていってほしい」

参照元:Yahoo!ニュース