お菓子が映画に?「たべっ子どうぶつ」がまさかの“映画化”を果たした理由 宮本周治社長が明かす「ファンづくり」の重要性とは

映画監督をイメージした画像

「たべっ子どうぶつ」といえば、発売開始から半世紀近く、世界25の国と地域で販売されているロングセラー商品だ。

そんな国民的お菓子が、3DCGアニメ『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』として映画化し、5月1日より全国映画館で上映されている。

声優陣には松田元太(「Travis Japan」)、水上恒司、髙石あかりら豪華キャストが勢ぞろいしている。

映画化が報じられた際、SNSを中心に「お菓子をどうやって映画に?」と話題を集めた本作。

どのような思いでこの映画を送り出そうとしているのか、製造・販売元であるギンビスの宮本周治社長に聞いた。

――ギンビスにとって「たべっ子どうぶつ」はどのような位置づけのブランドなのでしょうか? 

われわれが大切に育ててきたブランドであり主力商品だ。

「たべっ子どうぶつ」という名前には由来があって、「よく食べる元気な子に育ってほしい」という願いが込められている。

5月5日は「たべっ子どうぶつの日」として、子どもの成長を願う日。

そしてこれは、会社の創立記念日であり、創業者(宮本芳郎氏)の誕生日でもあります。映画の公開日を5月1日にしたのも、この記念日に近い日程で合わせたかったからです。

――アニメ化のオファーを受けた時はどう思われたのでしょうか? 

もともと5、6年ほど前から「何か映画のようなものができたらいいな」と漠然と思っていて、ちょうどその時にこのアニメのお話が来た。

いい話だなと思い、「すぐやろう」と即決でした。

やはりグッズや映画もそうなんですが、一番の目的は「ファンづくり」なんです。

ひとりでも多くの方に“「たべっ子どうぶつ」のファン”になっていただきたい。

今回はまさにその一環です。

ギンビスの会社理念として「お菓子に夢を」と掲げています。

お菓子が持つワクワク感や楽しさを通じて笑顔になってもらいたく、3年間でいろいろなポップアップショップを約250店舗展開してきました。

「たべっ子どうぶつLAND」というイベントも3回開催し、来場者数も約25万人に達しています。

その流れでゲームもつくりましたし、秋元康さんを総合プロデューサーにお迎えし、歌もつくりました。

その他、多くの企業さまとのコラボ商品を展開しました。

ルイ・ロブションも監修に加わったラグジュアリーなカフェなども表参道に期間限定でオープンさせたのですが、これも意外性があり、新たなファン層の獲得につながりました。

こうした多様なタッチポイントを増やして、より多くの方にファンになってもらおうと思い、ブランドを育てるためにやれることは全部やってきました。

――いわゆる“ロングセラーブランド”を活性化させるためには、お菓子だけでなく、さまざまなタッチポイントも必要であると。当然、ブランドを守るという立場もあると思いますが、「ここは絶対に外さない」といった線引きは? 

一番大切なのは「味」と「品質」ですね。

もちろん、グッズやコラボも大切ですが、「たべっ子どうぶつ」のお菓子自体が売れているということが前提。

実際にこの5年間で売り上げは2倍から3倍に伸びていますし、10年単位で見ても、ものすごく成長していることがわかります。

やはり「たべっ子どうぶつ」は、みんなが保育園や幼稚園の頃にはじめて食べた“思い出のお菓子”なので、その味が変わってしまうと「なんか違う」とすぐに分かってしまう。

たとえば家でお母さんが作ってくれたハンバーグやオムライスの味が、思い出として心に残ってますよね?

あれと同じで、「たべっ子どうぶつ」の味も思い出とセットになっている。

だからこそ味はなるべく変えないようにしています。

もちろん原材料や機械も50年前とは違いますが、それでも思い出の味を再現し続ける努力をしています。

「たべっ子どうぶつ」は「愛と平和」をテーマにしているお菓子なので、それがすごくわかりやすく映画で表現されていたなと。

お菓子業界自体が平和産業ですし、今の時代、コロナや戦争・紛争がある中で、少しでも気持ちがホッとするような内容になっていたと思います。

脚本やキャラクター、世界観など、その都度、進捗状況を共有してもらいながら、竹清仁監督や脚本家の池田テツヒロさん、TBSの方々らと一緒に「たべっ子どうぶつの世界」を広げるようにしていきました。

「たべっ子どうぶつ」のキャラクターは全部で46種類ありますが、その中でも特に人気のある9種類を選んで映画に登場させています。

声優さんも魅力的な方ばかりで、「たべっ子どうぶつ」の世界観を広げてくれる役割を担ってくれています。

多様性の観点でも、例えば「ぺがさすちゃん」のようなキャラクターを出したりして、今の時代に合った多様性を意識した作品になっています。

――映画の制作にギンビスはどれくらい関与したのでしょうか?

詳しくは言えないことも多いのですが、だいぶ深く関わりました。

毎月、毎週、打ち合わせがありましたし、多くの方が応援してくださった。

TBSさんをはじめ製作委員会のメンバーとも連携して、気持ちを一つにして「魂を込めて」映画作りを進めてきました。

これは1社だけでは絶対にできなかったこと。多くの方の力と協力があったからこそ、ここまで来ることができたと思っています。

――今回の映画の着想のきっかけは、本作のプロデューサーが、「たべっ子どうぶつ」のイラストがラッピングされた営業車を街で見かけたことだったとか。

実は10年くらい前から「すべての営業車にラッピングをしよう」と言っていました。

そこにキャラクターが描かれていると、ぐっと親しみがわくし、宣伝にもなる。

まさに“走る広告”という感じで。

営業の方も自分が扱っている商品がどういう人に買われているのか、自分が大切な商品を預かって売っているということを肌感覚で実感できる。

それが商品の大切さを伝えることにもつながると思っています。

――SNSでもその営業車を目撃したという投稿をよく見かけます。

そうですね。

よく写真を撮っていただいていますし、SNSでもいいねをいただいています。

トミカでもミニカーにしていただいたりして、すごく広がってます。

――「たべっ子どうぶつ」は海外展開にも力を入れているので、映画も海外を視野に入れているのでは? 

「たべっ子どうぶつ」に関しては45年くらい前から海外展開を進めています。

中国や香港、アジア各国など、今では25の国と地域で販売しています。

実際、海外でもたくさん買っていただいておりますし、中国の工場も今年で27年目となりました。

中国ではパッケージも英語と中国語表記にしていますし、ヨーロッパではオランダ語やドイツ語、フランス語表記にするなど、国や地域ごとにすべて工夫を凝らしています。

やはり親子で英語を学ぶきっかけにもなりますし、教育的な商品なので。

映画化は必然だったと思いますし、そうしたかったという思いもありました。

ですから映画も、誰が見てもわかりやすい作品にはしていますので、今後、海外にも展開していけたらいいなと思っております。

――ところで映画には、湖池屋のポリンキーや、やおきんのうまえもんなど、他社のお菓子のキャラクターも登場するなど、オールスター感がありました。

やはりお菓子といえば、「たべっ子どうぶつ」以外にも、いろんなお菓子があるので。

いい意味でお菓子業界全体が盛り上がってくれたらいいなと。

やはり1社だけでは限界がありますし、日本のお菓子業界って本当に素晴らしいですから。

――他社へのオファーはスムーズだったのでしょうか?

それはテレビ局さんを通じてお願いしたところではありますが、なかなか大変だったと聞いております。

ですが前向きに受け取ってくれた会社さんも多かった。

やはり意外性や驚きもすごく大事なことだと思うので。

「お菓子業界からこんな映画が出たんだ」と驚いてもらえるのは嬉しいです。

――5年後の2030年には創業100周年を迎えることになります。今後の展開は? 

詳しいことはまだこれからですが、将来の希望、なりたい姿、そういうこともいろいろ考えながら、先々を見据えていかないとならない。

ですからこれは終わりじゃなく、始まりだと思っています。

うちは今年が創業95周年。

これからの100周年に向けて動きはじめたところ。

今は会社の土台や基本的な仕組みを整えている最中。

しっかりとした土台があるからこそ、その上に立つものも高くなっていく。

だからこそ、そこは丁寧に作っていきたい。

そこからさらなる200年に向けて、このお菓子が本当の意味でのスーパーロングセラー商品として、皆さんに愛されるお菓子になったらと思っています。

参照元:Yahoo!ニュース