子どもの「顔出し」写真をSNSに投稿、線引きは? 「子どもが将来的に恥ずかしいと思うものはやめて」と専門家

入園や親子遠足、新しい習い事など、イベントが目白押しで子どもの写真や情報をSNSにアップする人も増える時期だ。
しかしなんでも調べられるこの時代。
情報はどこまで出してOKなのだろうか。
SNS投稿する際の線引きとなる考え方や将来的なリスクについて、ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さんに聞いた。
「子どもが3歳になったので顔出し投稿をやめます」
こうした投稿がSNS上で目立っている。
一方、子どもの顔や近所の写真をアップし続ける投稿もあり、価値観は二分している。
それが原因で人間関係に歪みを生むことも。
未就学児を育てる都内の30代男性は、SNS投稿への価値観の違いから仲の良かった友人への印象が変わったと打ち明ける。
男性はインスタグラム(以下、インスタ)のアカウントに鍵をかける慎重派。
我が子の写真をSNSに投稿したのは一度限り。
友人限定のアカウントで誕生を報告した。
一方、同時期に親になった知人女性は大のインスタ好き。
双子を子育中で、生まれる前のエコー写真からマンスリー写真まで、子どもの写真を載せるだけのアカウントも作っている。
両親の顔は出さないのに子どもの顔は投稿し、家が推測されやすい近所のカフェ情報も頻繁に投稿していることに男性はモヤモヤ……。
「カフェまで載せると行動範囲が分かるし、ましてや双子だから目立つ。ここまで子どものことを載せていいのかな?特定されないか心配……」
男性はインスタ投稿から友人に対し、不信感を抱くようになった。
保護者が子どもの許可を得ずに子どもの写真や動画などをSNSやネットなどで公開するシェアレンティング。
シェア+ペアレンティング(子育て)の造語だ。
親のリテラシー不足を問題視するのはITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さんだ。
「シェアレンティングは身近な問題で、実際に周囲でもかなりあります。対象となる子どもは一般的には未成年が対象ですが、ある程度大きくても子どもの同意を得ないで勝手に公開している場合はアウトだと思います。中には子どもたちの上半身裸の水遊びや入浴シーンをSNSにあげている人もいます」と高橋さんは語る。
掲載を控えるべき写真の線引きについて高橋さんは「子どもが将来的に恥ずかしいと思うこと、デメリットがあることはすべてNG。裸はすべてやめた方がいい。不快で恥ずかしい思いをする写真、いじめにつながるような写真は出してはいけません。小さい子の入浴シーンやおむつ替え、おまるにまたがっている写真をインスタなど見かけますが、その辺りはすべてやめた方がいい」と話す。
大きくなり、子ども自身が両親の投稿に苦しむケースもあるそうだ。
「過去にオーストリアで10代の女の子が親を訴えた例があります。親がかつてFacebookに自分の幼少期の写真を投稿していて、それらを削除しろという内容でした。その写真はおむつ替えなどティーンの女の子には非常に恥ずかしいものばかりで、“親の友達”にすべてに公開していました。子どもからすれば“親の友達”は知らないおじさんおばさんです。親に削除依頼をしたけれど同意してくれなかったので訴えた、という例でした。SNSの投稿は親子関係を悪化させてまでするものではありません。子どもから同意を得られないならすべてアウトです。実際にここ最近、私の周りでも『子どもに怒られたから』とSNS上の子ども写真を削除する人が増えています。シェアレンティングの考えがない数年前までは、『子どもは自分のもの』『かわいいから見て欲しい』という感覚でバンバン投稿する人がたくさんいました。でも今は子どもから『私を利用しないで』と削除を指示するようになってきています。将来子どもが顔を出して実名で活動していくなら、それは彼らの意思・責任においてするものです。それまでの間は名前も顔も出さない選択肢を親が残してあげることも大切です」(高橋さん)
子どもの将来を考えるとリスクが高いシェアレンティング。
赤ちゃんの写真も対象になるのだろうか。
高橋さんはSNSは使い方次第では有用性があり、「すべては否定しない」と話す。
「顔がまだできあがっていない2、3歳頃までの、裸ではない“かわいい写真”を載せることは否定しません。この頃と大きくなってからの顔を比べると同一人物とは思えないほど変化することが多いですから。これはデジタルタトゥーとは違うのかなと。小さい頃の育児は大変です。ワンオペになることも多いです。そんな憔悴しきっているときに、SNSの存在に救われたという親御さんたちはたくさんいます。追い詰められてうつになりそうなとき、子どものかわいい写真を投稿して『かわいいね』と言われたら、やっぱりかわいいと思える。SNS上で情報交換したり慰め合ったりもできる。先輩パパママにアドバイスももらえる。だからなんでもかんでもダメではなくて、SNSも使いようだと思います。ただ、今は生成AIで勝手に画像を作り替えられるリスクもあります。それを考慮すると横顔や後ろ姿、かわいい手や足、顔にスタンプなど出し方を工夫するといいですね」
ただ、冒頭の女性のように危うい投稿も後を絶たない。
学校名は隠しているのに特徴的な制服姿の写真、背景や行動範囲から分かる最寄駅、旅行中で留守が分かるような投稿も目立つ。
こうした親のリテラシーの欠如は、知識不足から来ると高橋さんは指摘する。
「SNSが始まってから約20年、iPhoneが発売されてから約15年。つまりだいたいの保護者は成人したあとにSNSやスマホを使い始めていて、今の子どもたちのようなリテラシー教育を学校で受けていません。今のZ世代はデジタルネイティブの世代。小学生のうちからリテラシー教育を受けていて、大人よりよっぽどリスクも分かっています。SNSのアカウントを鍵アカ(非公開アカウント)にしたり、アイコンも顔写真にしていなかったり。そもそもそれほど投稿していないという子も意外と多いです。芸能人の方も旅行は時差投稿にしたり、子どもの顔出しはしないようにしたりと工夫されています。SNSの投稿の判断に迷ったら、子どもや芸能人をお手本にするのもいいかもしれません」
参照元:Yahoo!ニュース