トランプ政権が「寄港料」方針、海運・自動車メーカーに警戒感 実質的な関税に「大きな障害だ」

自動車運搬船を撮影した画像

米トランプ政権が、米国製以外の自動車運搬船が米国に寄港する際に手数料を徴収する方針を示したことに、海運会社や自動車メーカーが警戒感を強めている。

日本勢は自動車船による運搬で世界の約4割のシェア(市場占有率)を持つ。

寄港料が徴収されれば実質的に関税と同じ措置となり、価格転嫁せざるを得ない。

日本の自動車メーカーの競争力低下につながる恐れもある。

商船三井が30日発表した、2026年3月期の連結業績予想は、最終利益が前期比60.0%減の1700億円となった。

米国の関税措置の影響で自動車船やコンテナ船の輸送が減り、経常利益が約400億円押し下げられるという。

橋本剛社長は30日の決算記者会見で「俊敏に動いた者が勝ち、乗り遅れた者が劣後する。海運業界でも勝ち負けがはっきりする市場になる」と見通した。

米通商代表部(USTR)は4月17日、国外で建造された自動車船の寄港料を10月14日から徴収する方針を示した。

不公正な貿易慣行があれば制裁できると定めた米通商法301条に基づく措置だ。

USTRは、自動車船に積載できる上限台数を基に、1台当たり150ドル(約2万1000円)を徴収する。

2月時点では中国で建造された船などを対象としていたが、後に拡大した。

寄港料の徴収は、米国内産業を保護すると同時に、存在感が低下した米造船業を活性化させる狙いもある。

世界の造船市場全体では中国企業のシェアが50%を超えており、トランプ政権は造船能力の強化を安全保障上の重要課題と位置付ける。

日本の海運大手は自動車船の保有隻数で大きなシェアを握る。

企業別で首位の日本郵船(111隻)など、大手3社で世界の約4割を占める。

自動車船はかつて「花形」と呼ばれ、「収益性が高く、安定した売り上げが見込める」(海運大手)事業だという。

海運各社は、寄港料の徴収が始まった場合、運賃に上乗せして影響を軽減する方向で協議を進める。

一方、自動車メーカーは寄港料を価格に転嫁するかどうか、判断を迫られる。

日本の自動車大手幹部は30日、「関税措置を受けて生産体制の見直しを進める中で、これ以上の負担はビジネスの大きな障害だ」と嘆いた。

東海東京インテリジェンス・ラボの土谷康仁シニアアナリストは「寄港料を巡り、海運会社と自動車メーカーの間で厳しい価格交渉が予想される」と指摘している。

参照元:Yahoo!ニュース