国内生保、25年度の円債投資は入れ替え中心 超長期国債の妙味指摘も

生命保険をイメージした画像

国内生命保険各社の2025年度の資産運用計画では、従来は主力の投資先であった日本国債に対する投資スタンスが分かれた。

規制対応目的での超長期国債買いは既に一巡しており、過去に購入した低い利回りの債券を売って利回りのより高い債券に入れ替える取り組みが中心で、残高は横ばいから減少を見込む会社が多い。

一方、このところの超長期金利の急上昇を受け、純粋な投資目線から国債買い意欲を示す会社もある。

25年度から導入される新資本規制(経済価値ベースのソルベンシー規制)では、財務の健全性を高めるために資産と負債の年限差(デュレーション・ギャップ)を縮めることが求められ、生保各社では数年にわたって保険契約という長期の負債にマッチする超長期国債の買い入れを積極的に進めてきた。

しかしこうした対応は前年度までに一巡し、今年度は大手の多くが過去に購入した低利回り債の入れ替えを中心とした運用方針に舵を切ったことから、国内債券の残高は横ばいから減少とする計画が主流だ。

このうち最大手の日本生命では、ポートフォリオの強化を最優先課題として、超低金利の時期に買った債券を利回りが上昇した債券に入れ替える取り組みに注力する。

結果として、日銀のマイナス金利政策導入を受けた16年度以来、9年ぶりに日本国債の残高が減少に転じる見込み。

明治安田生命、かんぽ生命、朝日生命も残高が減少する計画であるほか、第一生命は残高がおおむね横ばい、大樹生命は小幅増を見込んでいる。

国債の買い方について、これまで多く聞かれた「平準的なペースで買う」、「淡々と積み増す」といった方針を掲げる生保が目に見えて減少したことが、25年度の運用計画の特徴だ。

こうした中、純粋な投資目線から超長期国債に妙味を見いだす向きも出てきた。

住友生命では、資産と負債をマッチさせるALM運用の枠組みでは国債残高の減少を見込む一方、収益力向上のため機動的な運用の枠で日本国債を数千億円規模で積み増す計画を示した。

トータルで見ても、国内公社債の残高が数千億円規模で増える予定という。

投資対象年限はALM運用の30年物が中心との方針を離れ、各年限のリスク対比リターンや負債と資産のキャッシュフローのマッチング状況を見ながら、10年超の超長期国債の中から機動的に投資先を判断していく。

太陽生命は「利回り対比ではヘッジ付き外債よりも円債の方が魅力的」だとして外債から円債へのシフトに取り組む方針で、円債残高を増加させる。

また富国生命では、「異次元緩和の超低金利下では投資を控えてデュレーションマッチングも行っていなかったため、負債に比べて資産サイドのデュレーションが短く、公社債の含み損も相対的に小さい。超長期債を買い入れる余地は十分にある」(森実潤也財務企画部長)として、円債残高を1100億円増やす計画。

大同生命もALMの観点からまだ資産サイドのデュレーションを長期化する余地があるとして、超長期国債を中心に残高を3000億円程度増加させる。

足もとでは30年金利が2.7%をつけるなど、3月に入って以降の超長期金利の上昇(国債価格は下落)とボラティリティーの高まりが顕著だ。

かんぽ生命が「今のレベルは魅力的だが、流動性がなく値動きが荒い時に我々が動くと市場を動かしてしまうのでやりづらい」(野村裕之執行役員・運用企画部長)と市場の落ち着きを待つ考えを示した一方で、年度ベースでは国債残高の減少を見込む日本生命では「足もとの金利は水準的には魅力的で、4月前半だけで言うと多めに買っている」(都築彰執行役員・財務企画部長)と明らかにしている。

また明治安田生命も北村乾一郎執行役員・運用企画部長が「例えば4月9日に(トランプ米政権の関税政策を巡る混乱から)金利マーケットが壊れた時にはそれなりに入っていけた。我々は流動性を供給できる長期の投資家として、そういう時に最後の買い手として頑張って入りたい」と述べるなど、残高減少を見込む大手の一角からも利回り上昇を受けた投資妙味を評価する声が上がり始めている。

参照元:REUTERS(ロイター)