自閉症の息子、痴漢扱いで通報されショック ヘルプマークあったのに 発達障害の特性、誤認されるケースも

「自閉症の長男が痴漢と勘違いされ、通報された。ショックです」。
広島県内の50代の母親から、悲痛な訴えのメールが編集局に届いた。
発達障害のある人が不審者に間違われるケースは少なくないようだ。
当事者を理不尽に傷つけないために、対人関係やコミュニケーションが苦手な特性を理解しておきたい。
母親によると、トラブルはある朝、路線バスの車内で起きた。
長男(21)が2人がけ座席の窓側に座っていたところ、通路側に座った中年女性が「太ももが触れるので詰めて」と話しかけてきた。
だが、長男は景色を見るのに夢中。
座る位置を変えずにいたところ、中年女性は「痴漢に遭った」と警察に通報した。
後日、要請を受けて母子で警察署へ。
母親は、長男は名前を呼ばれなければ、自分に話しかけられていると理解できないことがあると説明した。
長男のリュックサックには、要配慮だと周囲に知らせる「ヘルプマーク」を付けているが、通報した女性が見たかどうかは分からない。
警察はバス内の録画から、長男は外を見ていて痴漢行為は確認されなかったとしたが、全身や顔の写真を撮られた。
被害届は取り下げられたが、母親は「警察官に撮影されるのを見たショックは消えない。息子も『おまわりさんに呼び出された』と落ち込んだ様子だった」と憤慨する。
障害者支援に取り組む辻川圭乃弁護士(大阪弁護士会)によると、「強いこだわりや人との距離感をつかみにくいといった特性のある人が不審がられ、通報されることはよくある」という。
例えば、こんなケースだ。
「かばんが開いた状態を気持ち悪いと感じ、他人のかばんを閉めようとしてひったくりに間違われた」「キラキラした装飾が好きで、服を凝視していたらストーカーと思われた」…。
広島県で発達障害者を支援している団体にも、「『近くに友人宅がある』と聞いて確かめないと気が済まず、よその家をのぞき込もうとした」「つるつるした布の感触にこだわりがあり、他人のかばんや服を触ろうとした」といった事例の報告が寄せられている。
本人のこうした特性を踏まえ、家族や支援者は、社会のマナーや他人との適切な距離感を身につけられるよう懸命にサポートしている。
長男が通報された母親は「気になる行動を見ても、悪意があると決めつけず、ヘルプマークなどを手がかりに『配慮が必要な人かな』というまなざしで対応してくれる人が増えてほしい」と願う。
参照元:Yahoo!ニュース