日米財務相会談、無事終了の陰に2つの布石と1つの幸運 身構えた市場は肩透かし

日本とアメリカの国旗を撮影した画像

ワシントンで24日(米国時間)に行われた日米財務相会談で、米側からはドル高円安の是正に向けた具体的な目標や枠組みに関する要求は出なかった。

「第2のプラザ合意」を警戒し、身構えていた市場は肩透かしを食らった格好だ。

市場では「成果なし」との評価もあるが、波乱なく終えられたのには、2つの布石と1つの幸運があった。

「そういう話は全くなかった」。

加藤勝信財務相が記者会見で、ベセント米財務長官側から為替を問題視する発言がなかったと明かすと、外国為替市場では円を売ってドルを買い戻す動きが広がった。

過度なドル高円安は、貿易赤字解消を目指す米国にとっても、物価高に直面する日本にとっても好ましいことではない。

また、日本企業の業績への影響を考えると、急激にドル安円高が進むことも避けたいところだ。

そんな中、注目の会談が無難に終わったのは2つの布石があったからだ。

1つは、日米間で今回改めて確認した「為替レートは市場で決定され、過度な変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響を与える」との文言だ。

これは先進7カ国(G7)が2017年に出した共同声明に盛り込まれており、日米ともG7メンバーとして合意している。

日米貿易交渉のルートを2つに分けた日本側の戦略も奏功した。

全体は赤沢亮正経済再生担当相、為替に関しては加藤氏が窓口を担うことで、貿易赤字の問題から為替の問題を切り離すことにひとまず成功した。

加藤氏の交渉相手がベセント氏であることも、日本にとっては幸運といえる。

米金融街出身のベセント氏は市場の手の内を熟知する。

エコノミストの豊島逸夫氏は「ベセント氏が日本との交渉の前面に立つことで、少なくとも彼の言動が原因で市場が荒れることはない」と太鼓判を押す。

日米は引き続き為替について協議を続けるが、ベセント氏が財務長官である限り、「今後も市場に取引の材料を与えるような〝成果〟が出てくることはない」というのが豊島氏の見立てだ。

ただ、肝心のトランプ大統領は日本が円安誘導をしているとの考えを曲げたわけではない。

日本にとっては当面、気を抜けない展開が続く。

参照元:Yahoo!ニュース