「スクショ」商標登録に困惑する声も SNS投稿、記事の利用…どんな場合に制限される?

商標登録の概要を説明している人

「スクショしよ」という言葉の入ったLINEスタンプをつくろうとしたところ、「権利者からの許諾が証明できない」との理由でできなかったという投稿がXで注目を集めた。

「スクショ」という商標を登録していたのは、GMOメディア株式会社(東京都渋谷区)だ。

商標登録の検索サイトによれば、2015年6月に登録されていた。

この商標登録についてSNSでは「一般的な言葉を登録できるのがおかしい」「早いもの勝ちだから仕方ない」と賛否両論になっている。

同社は指摘を受け、「スクショ」について、「当社における事業保全および将来的な活用の可能性を踏まえて取得・管理している商標です。一方で、『スクショ』という言葉を日常的に使用すること(例:SNS投稿・創作活動など)に対し、当社が商標権を行使する意図は一切ございません」という声明を出しました(4月22日付)。

また、声明では、「商標権は、商品やサービスの出所を示す目的での「商標的な使用」に対してのみ効力が及ぶものであり、一般的な言葉としての利用や、個人による表現・創作活動を制限するものではありません」と述べている。

今回、明らかとなった「スクショ」の商標登録。

法的な問題はないのだろうか。

知的財産法に詳しい齋藤理央弁護士に聞いた。

——「スクショ」のように一般的に広く使われている言葉を、企業が商標登録することは法的に可能なのでしょうか。

商標法は「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」は商標登録できないと定めています。

つまり、商標は商品やサービスの出所や品質を明らかにするのですが、その前提として商標に識別機能が必要になります。

消費者が別の商品と見分けがつかないほどありふれた商標だとその役割を果たさないため、商標登録しても意味がありません。

例えば、普通名称を普通に用いられる方法で表示する場合などです。

つまり、うどんに「うどん」と書いて売っていても、どこのお店のうどんか誰にも分からないので、そんな商標を登録しても意味がないため商標登録できないことになっています。

逆に、おにぎりに「うどん」と表示してあると「うどん」と書いてある変わったおにぎりだということで、消費者は別のおにぎりと区別がつきます。

このように普通名称でも普通でない使い方をするのであれば商標登録ができます。

「スクショ」も、今回のように例えばレンタルサーバー事業に「スクショ」と表示して提供するのであれば変わった名前のレンタルサーバー事業ということで消費者においてサービスの区別がつきます。

そういう部分で普通名称に関わらず商標登録が認められているのだと思います。

——第三者が「スクショ」という言葉を日常会話や記事、SNS投稿、商品説明などで使用した場合に、商標権侵害に該当する可能性はあるのでしょうか。

商標は、商品やサービスの出所や品質を表すため、こうした機能を害さない使用方法は禁止されません。

例えば、第三者が「スクショ」という言葉を日常会話や記事、SNS投稿、商品説明などで使用してもその言葉とGMOメディアが商品やサービスに表示している「スクショ」は語弊を恐れず言えば別の言葉なので全く問題がないことになります。

——商標登録されている「スクショ」を、企業やメディアがビジネス用途で使用する場合、どのような点に注意すべきでしょうか。

「スクショ」を例えばGMOメディアが商標を登録している例で言えば、レンタルサーバーや検索エンジンなどに使用したい場合は許諾が必要になります。

この場合許諾を取らずに使用すると商標権侵害になる恐れがあるので注意すべきです。

——社会の変化により、言葉がより広く使われるようになった結果、「スクショ」の商標登録が無効になることはあるのでしょうか。

「スクショ」自体はスクリーンショットの省略形として一般的に使用される一般名称と言って良いでしょう。

しかし、GMOメディアが商標を登録している例で言えばレンタルサーバーや検索エンジンなどスクショと表示することで少し変わった名前のレンタルサーバーであるとか、検索エンジンと消費者に認識され得るので商標としての機能を果たすと考えられます。

その意味で、今のところ商標登録は無効にならないでしょう。

しかし、商標は使用しないと取り消されることがあります。

継続して3年以上日本国内でその商標が使用されていない場合、商標登録取消審判を誰でも申し立てることができ、申立を受けた場合は商標権者の方で使用の事実を証明しなければならないこととされています。

参照元:Yahoo!ニュース