業績不振に陥った米テスラ、軌道修正に懸念

業績不振の事業をイメージした画像

米電気自動車(EV)メーカー、テスラの地位がかつてどれほど揺るぎないものに映ったのかを忘れるのは簡単だ。

イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はEVの魅力を高めることで業界全体を根底から覆し、企業価値に相当する時価総額は業界最大級のメーカーの合計を超えていた。

しかし、最新の業績は魅力的とは言い難く、テスラがどのように軌道修正するのかについて懸念が生じている。

LSEGのデータによると、テスラの株価は今後1年間の予想利益の82倍で取引されており、実際の業績は余計なものに思えるかもしれない。

大型蓄電システム「メガパック」の業績は改善を続けているほか、同社は過去にも難局を切り抜けてきた実績がある。

しかし、22日に発表された業績は無視できないほど悲惨だ。

コックス・オートモーティブによると、テスラの2025年第1・四半期(1―3月)の納車台数は前年同期より13%減少し、ピックアップトラック「サイバートラック」の販売台数は発売後わずか5四半期でピーク時より61%減った。

中核となる自動車事業の売上高は20%減った。

環境規制クレジットを除いた調整後の売上総利益率は12.5%と、3年前の30%の半分未満まで落ち込んだ。

設備投資の半減は、野心的で高額の計画を抱えている企業にとって悪い兆候だ。

マスク氏が、自ら削減しようとしている従業員によく語りかけるように、テスラは岐路に立たされている。

関係者がロイターに語ったところによると、マスク氏は車両価格が2万5000ドルの手ごろなモデルの開発を遅らせ、代わりにベストセラーのスポーツタイプ多目的車(SUV)「モデルY」の廉価版の投入を優先している。

売上総利益率を維持するにはコストを20%削減する必要があり、そのためには価格を3万2000ドルに設定することが必要となる。

だが、テスラの25年第1・四半期の営業利益率2.1%は、モルガン・スタンレーのアナリストらが自動車事業の収支を「せいぜい」とんとんにできると推定している水準の半分の水準だ。

マスク氏は大衆車の代わりに、ハンドルを取り除くほど洗練した自動運転車を追い求めている。

合理的ではあるものの、大胆な発想だ。

自動車の製造は平凡なビジネスだが、それをソフトウエアで駆動する家電製品に変えれば、アップルがiPhoneで実現したように市場を大きく揺るがすことになるだろう。

そのような支配力を達成するにはスイートスポットを突く機能、手頃な価格、そしてテスラの経営以外の事に気を取られたり、世論を二極化する論争を巻き起こしたりするのを避ける才覚が必要となる。

マスク氏はそのような自制能力を示していない。

マスク氏はトランプ米大統領の側近となってからのわずか数カ月間でテスラの既存顧客や潜在的な顧客を怒らせ、排斥し、株価は今年に入って約40%も下落した。

マスク氏は22日の決算説明会でテスラの経営に再び集中すると約束したが、宇宙旅行やソーシャルメディア(SNS)、人工知能(AI)、トンネル掘削、脳へのチップ移植といった他の事業を完全にやめるとは表明していない。

高速走行中に車線を変更することは、憤慨して注意散漫になる運転手でなくてもかなり難しい。

参照元:REUTERS(ロイター)