公立高入試で「デジタル併願制」検討へ 自動的に合格先割り振り

文部科学省は、公立高校の入試で一つの高校しか受験できない「単願制」の見直しに向けた検討を始める。
複数の高校を志願でき、志望順位と入試の点数などに基づいて自動的に合格先を割り振る「デジタル併願制」導入の可否をデジタル庁と探る。
高校授業料無償化で私立人気の高まりが予想されることを踏まえ、公立を選びやすくする狙いがある。
ただ、デジタル併願制は学校や生徒の序列化が進むとの懸念があり、文科省は慎重に議論を進める。
石破茂首相が22日のデジタル行財政改革会議で、デジタル併願制を前提に「メリットや現場の課題を丁寧に考慮し、希望する自治体での事例創出の具体化を図ってほしい」と単願制の見直しに向けた対応を文科省とデジタル庁に指示した。
公立高入試は現在、多くの都道府県で「単願制」が採用されている。
経済基盤の弱い家庭では公立が不合格になった場合に費用が高額な私立に進む事態を避けるため、志望校のランクを落とすなどの課題が指摘されていた。
回避した生徒より点数の低い生徒が合格するといった不公平が生じるケースもある。
こうした課題について、デジタル行財政改革会議の委員から併願制で解消できると提案があった。
生徒が複数の志望順位をあらかじめ決めておき、入試の点数や内申点、面接、部活動の成果などを基に、デジタル技術を活用したアルゴリズム(計算手法)で生徒を順位付け、合格基準を超えた高校を合格先として自動的に割り振る仕組みだ。
デジタル処理するため学校現場の負担も少なく、海外では導入事例も多いという。
文科省によると、具体的な制度設計の工程は決まっておらず、今後実現の可否やメリット・デメリットを議論する見通し。
公立高入試の実施主体は都道府県のため、制度を新設しても一律に適用するかどうかは見通せない。
文科省幹部は、合格先の自動的な割り当てについて「生徒や学校の序列化が進みかねず、生徒の多面的な評価ができるかは疑問だ」と指摘。
生徒が順位付けされることで、学校の専門性や校風による進路選択でなく、偏差値重視の傾向が強まる恐れもあるとした。
一方、複数校を受験できるようにする取り組みは多様な進路を確保する観点から各自治体に促しており、愛知県や福岡県などでは既に導入されているという。
併願制の導入は、公立の生徒確保にもつながると見込まれる。
政府は2025年度、公立・私立ともに授業料支援の所得制限を撤廃し、26年度からは私立に進学した生徒への支援を大幅に拡充。
私立に進学する際の保護者負担が大幅に軽減され、設備の整った私立に生徒が流れる懸念が生じていた。
参照元:Yahoo!ニュース