流産を理由に年1万人超離職、経済損失は466億円 名古屋市立大など研究・ケアの重要性指摘

流産をイメージした画像

流産を経験した女性の離職による経済損失は少なくとも年間466億円に上るとの研究結果を、名古屋市立大などの研究チームがまとめた。

専門家は周囲の正しい理解やケアで離職を防ぐ重要性を指摘している。

チームは、同大病院と同大医学部付属西部医療センターに2017~20年に来院した不育症患者と妊婦を対象に、流産歴や仕事の継続状況、収入などをアンケート形式で尋ね、必要な項目を回答した1177人について分析した。

流産経験者571人のうち、流産を理由に離職したと答えたのは9%の52人で、働き続けた場合に見込まれる年収の中央値は398万円だった。

一般的な流産率(15%)を基に、年間の国内出生数から流産件数を年13万件と算出。

これらから流産を理由にした離職者は1万1700人と推計し、経済損失は総額466億円と算出した。

不育症は、流産や死産を2回以上繰り返す状態で、原因には胎児や夫婦の染色体異常、母親の子宮の異常などが多い。

チームによると、仕事やストレスが流産に直接関連するか明確ではないが、過去に行われた意識調査ではストレスが主な原因と考える人が目立った。

チームの伴野千尋・同大産科婦人科助教は「自らを責めたり、うつ病になったりして離職するケースがある。多くの人に正しい知識を普及させたい」と話す。

流産や死産の経験者を支援する「周産期グリーフケアはちどりプロジェクト」の共同代表で助産師の遠藤佑子さんによると、流産後は赤ちゃんを失った悲しみから、子どもや妊婦を目にして涙をこらえきれず、日常生活に支障を来すこともあるという。

そのうえで、遠藤さんは「壮絶な悲しみによって誰にでも起こり得る。職場復帰しやすい環境を作るには心情に寄り添い、必要な時に話を聞き、働き方の選択肢を伝えることが必要だ」と指摘する。

参照元:Yahoo!ニュース