3歳未満の「誰でも通園制度」高まる需要、母「よりかわいく感じる心の余裕できた」 課題は保育士確保

保育園をイメージした画像

親の就労の有無にかかわらず、3歳未満の子どもを保育所などに預けられる「こども誰でも通園制度」の本格導入まで1年を切った。

親と家庭にこもりがちな未就園児が社会性を身につけ、親のリフレッシュにもつながるといったメリットが期待される。

一方、モデル事業に取り組む自治体や保育現場からは「国の想定より人手が必要」との声が上がっており、人材の確保が課題になっている。

3月上旬、福岡市博多区の中比恵ソレイユガーデン保育園(定員105人)。

0~1歳の6人が保育士と一緒に絵本を見たり、歌ったりしていた。

いずれもモデル事業で週1回、登園している。

「子どもをよりかわいく感じる心の余裕ができた」。

夕方、長女(1)を迎えに来た市内の女性(31)が笑顔を見せた。

実家は県外で頼りにくく、夫も日中は仕事に出ており、長女と2人で過ごす時間が長い。

昨年7月から同園を利用。預けている間は、役所での手続きや、自身のリフレッシュのために使っている。

長女も同世代の子と触れ合ったためか、積極的に歩くようになり、苦手な食材も食べられるようになった。

「育児の悩みや迷いを保育のプロに相談できるのもありがたい。多くの人が利用できるよう、制度が広がってほしい」と願う。

制度は新たな子育て支援策の一環で、国が2023年に打ち出した。

保育所は0~5歳児が対象だが、親が働いていることが利用条件になる。

一方、幼稚園に就労要件はないが、預けることができるのは3歳からだ。

それまでは専業主婦世帯などは自宅で子どもをみている。

国の推計では、0~2歳児のうち、未就園児は6割弱の約146万人に上るという。

国はこの時期に「孤立した育児」で不安や悩みを抱える家庭が多いとみて、未就園児を条件抜きに預けられる制度づくりに着手した。

福岡市は全国に先駆けて23年夏から同園を含む3施設でモデル事業を始めた。

定員約120人に3倍以上の390人の希望が殺到した。

市は「想定以上にニーズがある」とし、24年度は33施設約930人分の枠を確保。

今年度は定員を1000人以上に増やした。

課題となるのが人手の確保だ。

制度の手引では0歳児は3人に1人、1~2歳児は6人に1人を配置し、保育士資格を持つ従事者は半数でよいとしている。

だが、同園の春田雅孝園長(55)は「3歳未満の子どもを慣れさせるには、職員の数も経験も必要」と強調する。

園ではモデル事業を始めるにあたり、保育士ら3人を新たに雇用した。

ただ、当初は慣れない環境に大泣きする子ども一人一人に職員がつき、春田園長をはじめ総出で対応していた。

24年にモデル事業を始めた熊本市では、施設側から「保育士が足りず、対応できない」との声が寄せられるという。

24年度は8施設39人の枠に対し、180人が利用を申請したが、今年度は11施設62人までしか増やせていない。

市保育幼稚園課の担当者は「保育士資格を持った潜在的な人材を掘り起こしたい」と語る。

全国の保育施設では人手不足が続いている。

こども家庭庁によると、昨年10月の保育士の有効求人倍率は3.05倍で、全職種平均(1.27倍)を大きく上回る。

制度導入が拍車をかけるとの懸念も出ている。

保育士らでつくる全国保育団体連絡会の大宮勇雄会長は「現場の繁忙感は限界に近い」と指摘。

「保育士の確保を後押しする施策とセットで本格導入するべきだ。そうでなければ職員がさらに疲弊し、子どもの命に関わる事故が起きかねない」と警鐘を鳴らす。

保育所などに人手が集まらないのは、子どもを預かる重い責任に見合わない低賃金も要因とされる。

政府は保育士らの人件費増などの待遇改善に努めている。

18日には保育人材の確保などを盛り込んだ改正児童福祉法が参院本会議で可決、成立した。

同法では、自治体に保育士の復職支援などを担う「保育士・保育所支援センター」を整備するよう求めている。

参照元:Yahoo!ニュース