東日本大震災の無利子融資、返済繰り延べ100億円超 震災前から経営不振だった事業者も

東日本大震災で被災した中小事業者の復旧費用を国と県が4分の3負担する支援制度「グループ補助金」を利用した岩手、宮城、福島3県の事業者のうち、自己負担分の残り4分の1を制度の枠組みである無利子融資で賄った30事業者が破産し、168事業者が返済を繰り延べたことが、各県への取材でわかった。
同制度は復興を推進した一方、100億円超が繰り延べされ、識者は融資やその後の支援のあり方を見直す必要があると指摘する。
無利子融資は「高度化スキーム貸付」と呼ばれ、2024年末現在、3県で計947事業者に647億円を貸し付けている。
同補助金を利用した事業者の約1割にあたる。
返済開始には5年の猶予が設けられ、その後も事業者が県に申請して認められれば月や年度単位で繰り延べできるが、20年以内の完済が必要だ。
返済を繰り延べた168事業者の内訳は岩手75、宮城69、福島24。
昨年末現在に繰り延べ中の貸付残高は計119億円で、宮城県が79億円で最も多い。
収益が改善せず、何度も繰り延べる事業者もある。
破産した30事業者の内訳は、岩手と宮城が各14、福島2で、計13億円が融資された。
破産したのは融資利用者の約3.2%で、融資に頼らなかった事業者の破産割合(約1.3%)の2.5倍になる。
施設や設備を原状復旧するのが同補助金の主な目的だが、破産や返済に窮する事業者の中には、震災前から経営不振だった事業者もあった。
一方で、復興に向けて迅速な対応が求められたため審査が甘く、「書類を出せばお金が出る」という状況があったとされる。
同補助金は現在も新規で受け付けている。
東北学院大の柳井雅也教授(経済地理学)は「お金だけ潤沢に注入した結果だろう。
第三者機関が専門的・客観的に審査したり、原状復旧した後の経営指導など、伴走支援を充実させたりすることも必要だ」と話している。
参照元:Yahoo!ニュース