すき家だけじゃない、ヤバすぎるネズミ被害の実態「配線をかじりお店が停電」「赤ちゃんのほっぺたをかじる ネズミ駆除の専門家は「人差し指ほどの穴が空いていれば侵入します」

ドブネズミを撮影した画像

今年1月、すき家鳥取南吉方店が提供した味噌汁にネズミの死骸が混入した問題で、全店閉店していたすき家だが一部店舗をのぞき先週4日から営業を再開した。

今後はショッピングセンター内などをのぞく店舗で行なっていた24時間営業を取りやめ、午前3時から午前4時の間で集中的な清掃作業を行うなどの対策をするとのこと。

繁華街の道路をネズミが走り抜ける光景はもはや日常茶飯事だが、実際どんな被害が出ているのだろうか。

約20年、ネズミ害虫駆除に当たってきた公益社団法人東京都ペストコントロール協会技術委員長の佐々木健氏に尋ねた。

東京都ペストコントロール協会によると、ネズミ被害の相談件数は東京都で2009年には1691件、2024年には4192件と年々増加傾向にあるという。

当協会技術委員長の佐々木健氏がネズミ被害の状況について語る。

「20年近く前ですが、とある飲食店のカレー鍋にネズミが入ってしまったということがありましたし、そういった混入話は過去には多々ありました。しかし、最近ではSNSの普及もあり、ネズミが出ることは死活問題だという飲食店の意識が高くなり、出る前から対策をとったり、出たらすぐに防除を行なう飲食店が増えています。たしかにネズミを見かけること自体は増加傾向にあるように思いますが、被害の相談件数が増えているのはネズミに対する意識の高さからだとも私は考えています。私の印象ですと、昔は『ネズミがいてもそれほど駆除は急がない』というお店もありましたが、ここ10年ではちょっとでも店舗内にネズミが出たら『すぐ何とかしてくれ』というお店が多くなっています」

防虫防鼠に関しては飲食店も軽視することなく、すき家のようにネズミがまるまる1匹味噌汁の中に入ってしまうという事例は昨今では珍しいようだ。

「飲食店に入り込んで住み着くのはクマネズミが多いのですが、クマネズミは警戒心が強いので人がいる間はなかなか姿を現わしません。なので、基本的には厨房から人がいなくなったあとに姿を現わしエサを探すので、料理そのものに混入するケースは、調理品を放置していなければほとんどリスクは少ないと言えます。とはいえ、ネズミが厨房の中を走り回るのを放置している飲食店であれば、ネズミ混入のリスクがまったくないとは言えません。すき家の件については画像で見る限りネズミの子どもに見えます」

普段、我々が生活していて目にするネズミのほとんどはハツカネズミ、クマネズミ、ドブネズミといったイエネズミと呼ばれる種類だという。

これらのネズミは感染症を媒介すると言われるが、実際にどのようなリスクが考えられるのか。

「ネズミは飲食店の入ったビルや建物の、天井裏とか壁の中に入って住み着きます。建物内に住み着くのはほとんどがクマネズミですが、人がいなくなると配管や換気扇、通気口などにできた隙間から室内に出てきて、厨房に食材がむき出しであればかじりますし、袋などに入っていても破ってかじります。クマネズミは野菜とか種など植物性のものがが好きですが、それこそゴキブリを食べたりもするんです。ネズミの排泄物内にはサルモネラ菌やレプトスピラ菌等の病原微生物がいることがあります。ですからネズミのフンやおしっこが病気を媒介してしまう危険性があります。例えばネズミが厨房でおしっこをバラまき、それに汚染された食材を口にし、レプトスピラ症を発症することもあります。レプトスピラ症は経皮感染もしますので、おしっこに触れることでも感染する危険性があります。命に関わるような事態になる事は少ないかと思いますが、風邪のような症状の軽症型や腎障害を引き起こす重症型などがあります」

こうした感染症だけでなく、過去にはネズミに直接噛まれる被害もあったとのこと。

鼠咬症スピリルムやストレプトバチルスを保菌したネズミに噛まれると、発熱・発疹などの症状が出る鼠咬症を引き起こす可能性もあり重篤化するケースもあるという。

「ネズミが侵入するのは飲食店だけではありません。一般家屋に浸入して、台所の食品をかじったり、壁をかじり穴を開ける、天井裏や壁内を走る物音が聞こえる等の被害を引き起こします。先ほどクマネズミに関しては警戒心が強いと言いましたが、ドブネズミに関しては気性が荒く攻撃的な性格をしていますので、警戒心は強くありませんが、捕まった個体を触ろうとすると噛みつくこともあります。また、飲食店内に入り込んだネズミが配線を噛み切り、店が停電してしまうという被害もありました」

ネズミの駆除は1日2日で終わるわけでなく、長い時は数ヵ月かかることもあるという。

「ネズミの駆除には毒餌や罠を仕掛けて店内にいるネズミを直接的に駆除するだけでなく、侵入経路を特定し、その穴を塞ぐのも同時並行でやります。クマネズミに関しては警戒心が強いので罠を仕掛けてもすぐにはひっかからないことが多いです。いつもはそこに無い異物だと思って避けてしまうので引っかからないんです。店内に住み着くのも1匹だけでなく、家族で住み着くこともあります。駆除を行いつつ、配線、配管の引きこみ口や換気扇周りなど、ネズミが侵入できる穴や隙間を金網などのかじれない金属性のものでふさぎます。飲食店も営業を止めるわけにもいかないので、閉店後や開店前に作業を行うのですが駆除が終わるまでは気が気じゃないと思います」

建物の構造上、ネズミの侵入を防げないケースもあるという。

例えば、駅直結型のビルや、人が入れないようなビルとビルの隙間が狭い場合など、建物にネズミが入ることは防げないという。

「クマネズミは、人差し指が入るほどの穴が空いていて頭さえ入れば、体が柔らかいので侵入できます。そういう意味では普段気がつかない隙間から侵入されることが多く、エサがあるところなら、なんとかエサを得ようと侵入します。なので、最近は飲食店では終わったあとに出す生ごみをフタつきのゴミ箱に捨てるなど、そもそもネズミが来ないように予防をするところも多いです。一般家庭においても食材を出しっぱなしにしたり、食べかすなどをきちんと掃除することで侵入予防になります」

東京都千代田区ではネズミに関する苦情が急増し、可燃ごみをフタつきの容器に入れるなどの条例化を検討している。

ネズミ対策のための条例は異例だが、高齢者が自宅に住み着いたネズミに体をかじられる被害なども出ており、放置しておけない事態となっている。

参照元:Yahoo!ニュース