地銀装う「ボイスフィッシング詐欺」各地で猛威 企業口座狙い電話、億単位の実害も

詐欺に引っかかる人

地方銀行を中心に実在の金融機関を装った自動音声電話が顧客企業にかかるなどし、口座の資金を不正に送金される被害が各地で相次いでいる。

インターネットバンキングを利用する企業の口座を標的にした「ボイスフィッシング」と呼ばれる詐欺の手口とみられる。

4月に入ってからも億単位の実害が出ており、各金融機関は顧客企業などに警戒を求めている。

「自動音声による電話でお客様の情報を確認することは絶対にない」

那覇市に本店を置く琉球銀行の担当者はこう強調した。

同行のネットバンキング口座を持つ企業に今月1日、琉球銀のヘルプデスクを装う自動音声の電話が相次いでかかり、他の金融機関の口座に不正送金される被害が複数確認されたのだ。

琉球銀によると、被害企業は音声案内に従ってボタンを押した。

つながったのは犯行グループの一味。

契約者情報を更新するとの説明を受け、ネットバンキングのIDやパスワードを伝えてしまったという。

送金被害は総額約1億円で、中には5千万円を不正送金された企業もあった。

不審電話に関する問い合わせは約180件にのぼったが、最初の問い合わせがあったのは1日午前9時40分ごろ。

約40分後には実害の申告も寄せられ、被害の拡大を防ごうと同10時50分ごろ、企業向けネットバンキングによる他行宛て即時振り込みの停止に踏み切った。

「被害の申し出を受け、すぐ振り込み停止を検討して決めたが、数件の被害が出てしまった」と担当者は声を落とす。

翌2日の午前9時半ごろには、徳島県を地盤とする阿波銀行に、顧客企業から「(阿波銀の)お客さまサポートセンターを名乗る自動音声電話があった」と連絡があった。

「ネットバンキングの設定ができていない」「設定しないと取引を停止する場合がある」といった内容だった。

だが、阿波銀でネットバンキングについて自動音声で案内するケースはなく、銀行側はすぐに偽電話と判断。

午前10時前には、即時振り込みの停止措置を取ったという。

さらに全件の振り込み状況などを調べ、実害は1件もなかったことが確認された。

阿波銀の担当者は「対応が早く、被害を防ぐことができた」と胸をなでおろした。

金融機関をかたる自動音声電話といったボイスフィッシングは昨年秋以降、全国で相次いでいる。

これまで各警察で少なくとも数十件の被害を確認しているが、特に3月以降は各地の地銀などで目立つ。

3月10日には山形県が地盤の山形銀行をかたる自動音声電話が県内企業にかかり、県などの第三セクター「山形鉄道」が計1億828万円を不正送金される被害が判明。

同12日には香川県に拠点を置く高松信用金庫を装った自動音声電話も100件以上確認され、顧客の企業1社が5千万円を不正送金された。

3月31日を中心に偽電話があった武蔵野銀行(本店・さいたま市)でも「額や件数は明かせないが実害があった」という。

今月3日には筑波銀行(本店・茨城県土浦市)を装う自動音声電話も確認されている。

各地の警察は金融機関からの通報を受けて捜査を進めるとともに「知らない電話番号からの着信は信用せず、金融機関の代表番号や窓口に問い合わせて確認してほしい」と呼びかけている。

参照元:Yahoo!ニュース