「いつ中絶をしますか?」20万人に1人“結合双生児”を宿した母が医師から告げられた言葉「くっついていてもいいやと思った」覚悟がつないだ命

妊娠している女性をイメージした画像

約5万人から20万人に1人の確率で生まれるとされている「結合双生児(結合双胎)」。

通常、一卵性の双子は受精卵が徐々に離れ、出産時には分離して生まれてくるが、結合双生児は十分に分離せず、つながったままの状態で生まれてくる。

この結合双生児を産んだ長嶺さんは、診察を受けた産婦人科で思わぬ言葉を聞かされ「頭が真っ白になった」という。

「いつ中絶をしますか?」。

それでも出産を決断した長嶺さんのもとには今、24歳になって元気に生きる2人の娘がいる。

妊娠が判明した当時、長嶺さんは病院での様子をこう振り返る。

「初めて診てもらう時に、先生が『ん?ん?』と首を傾げるようにお腹のモニターを30分ぐらいずっと見ていた」。

その後、医師から「『とりあえずおめでとうございます』と。とりあえずって何かなと思ったら『結合双生児です』と言われた。まず信じられないし、頭が真っ白だった」。

長嶺さんの胎内にいた双子は、心臓の音が1つしか聞こえなかった。

死産や流産がほとんどで、生まれたとしても24時間以内に亡くなる可能性が高いと説明された。

そして医師から「いつ中絶をしますか?」と問われた。

長嶺さんは「日本では産む人はほとんどいないと。でもどんな命であれ、私は産む。中絶というのは私の中には選択はなかった」と決めていた。

医師からは1週間考えて、再度決断するようにと勧められたものの、その決断は変わらなく、医師も出産を承諾した。

すると事態は好転した。

1つしか聞こえなかった心音が2つ聞こえるようになると、2カ月の入院を経て、子どもの成長と母親への負担を考慮しながら帝王切開。

2人合わせて3722グラム、へその緒は1つの状態で無事に誕生した。

長嶺さんは「生まれた瞬間は覚えていて、先生が『お母さん、生まれたよ!』と、すごくいい声で言ってくれた。『くっついていてもいいやと思った』。すごくかわいかったから、そんなことはどうでもよくなった」。

その後詳しい検査をすると、双子が共有していたのは肝臓のみ。

肝臓は再生能力が高く、切除してもほとんど元の大きさに戻るといわれているため、分離できる可能性も見えた。

日本では分離手術に例も少なく、分からないことも多い中、生後2カ月で手術に踏切、無事に成功。

「傷口が痛々しかったのと(2人が)涙がうっすら浮かんで泣いているのが見えてよく頑張ったなと。ただ、1人1人を抱っこさせてもらった時に、こんな軽かったんだと、その時しみじみ『ああ、分かれたんだな』と感じた」という。

それから24年、現在の双子は元気に成長している。

「記憶は全然ない。正直他人事という感じで…。こうやって1人ずつ元気なのは本当に奇跡に近い。ありがたいことだなと思う」。

手術跡が少し残り、低身長ではあるものの特に大きな病気もなく、今は幼い頃からの夢だったモデルを目指している。

「結合双生児が日本にいるよというのも、もっと広がってほしいし、ちょっと変わった生まれ方でも健康だし、普通な感じでやっていけるというのを低身長モデルとしてどんどん発信してきたい」。

参照元:Yahoo!ニュース