通信アプリ「シグナル」、秘匿性の高さで幅広く普及 米政権中枢にも

米実業家イーロン・マスク氏が率いる連邦政府のリストラ推進チームと、この取り組みを阻止したいと願う活動家らには「共通項」がある。
双方ともに通信の秘匿性を確保する上でアプリの「シグナル」を利用しているのだ。
モバイルセキュリティー専門家によると、誕生から10年余り経過したシグナルは今や、メッセージや通話がエンドツーエンドで暗号化される通信手段として絶対的な存在になった。
秘密保持に意識を使う反体制派のグループだけでなく、政府職員や議員、軍高官、企業トップらにも幅広く普及している。
このシグナルが全米で話題になったのは、トランプ政権の閣僚らがイエメンの親イラン武装組織フーシ派の空爆計画を巡る協議で、シグナルのチャットグループに誤って記者を招いた問題がきっかけだが、それ以前から首都ワシントンでは人気が沸騰する状態だった。
センサータワーのデータからは、今年第1・四半期の米国におけるシグナルのダウンロード件数は前期比で16%、前年同期比で25%伸びたことが分かる。
もはやワシントンでシグナルを使っていない議会スタッフや政治家を見つけ出すのは難しく、「ではこの件はシグナルで」と言えば、会話が面白くなりそうだという意味に等しい。
AP通信が最近行った調査では、全米50州で1100人を超える政府職員がシグナル上で発見された。
ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、マスク氏がトップに座る「政府効率化省」はシグナルを利用してリストラ計画の意見調整を行っている。
マスク氏自身も2022年の旧ツイッターを買収する際や、最近では子どもの母親の1人で保守系インフルエンサーのアシュリー・セント・クレア氏との連絡で、シグナルを使った。
シグナル利用を推奨する政府関係者もいる。
欧州連合(EU)欧州委員会は2020年、事務方職員に対してシグナルを使うよう指示するとともに、シグナルを「公式インスタントメッセージング」アプリとする指針を追加した。
米政府はそれほどあからさまではないが、昨年終盤にサイバーセキュリティー・インフラストラクチャー・セキュリティー局が発表した指針で、政府の上級職員はすぐに通信手段をエンドツーエンドで暗号化されたアプリに切り替えることを促した。
そうしたアプリの代表格がシグナルだ。
米上院はかなり前から、議会スタッフがシグナルを使うことを承認している。
一方でシグナルの秘匿性は犯罪者にとっても魅力がある。
米麻薬取締局(DEA)は2022年に発表した報告書で、麻薬ディーラーは常に顧客とシグナルや他の暗号化通信アプリ経由で会話していると指摘。
2021年1月6日の連邦議会襲撃事件でも暴徒らが共謀して計画を立てる際にシグナルが使われたことが裁判記録で判明している。
トランプ政権の政府組織リストラや歴史的に定着してきた憲法上の規定に挑戦する動きに反対する人々も、シグナルが会話の場所だ。
内部告発をする政府職員も、トランプ氏に任命された上司の監視を逃れるためシグナルを頼りにしている。
最近解雇された3人の政府職員はロイターに、同僚たちは急いでシグナルをダウンロードしたと明かした。
参照元:REUTERS(ロイター)