原因不明の頭痛や動悸、10か所目の病院でがんの告知受けうれし涙 「希少がん」と闘い発信する44歳

病院をイメージした画像

「褐色細胞腫」は、年間で新たに診断される患者が人口10万人あたり6人未満の希少がんだ。

このがんと闘う吉岡紀子さん(44)はSNSアカウント「褐色細胞腫SNS患者会」を運営し、患者や家族の不安を和らげて適切な医療につなげようとしている。

吉岡さんに、自身の闘病経験や活動への思いを聞いた。

――褐色細胞腫について教えてほしい。

「副腎髄質から発生する腫瘍で、血圧や心臓の働きを調整するホルモン『カテコラミン』を過剰分泌することにより、高血圧や高血糖、頭痛、不安感など様々な症状を引き起こし、不整脈や心不全などを併発することもある。腫瘍が副腎髄質以外の場所から発生するものは『パラガングリオーマ』と呼ばれる」

「2017年に発表されたWHO(世界保健機関)の腫瘍分類で、すべての褐色細胞腫・パラガングリオーマは転移の可能性のある悪性腫瘍(がん)と定義づけられた。しかし、『悪性は1割』とする説が広まっており、臨床医など医療関係者でもいまだに誤解している人が少なくない。基本的な治療は腫瘍の摘出術で、数年後、数十年後に再発する恐れがあり、定期的に経過観察する必要がある」

――吉岡さんは診断までにかなりの時間を要した。

「15年冬、仕事からの帰宅途中に突然息もできないほどの頭痛に襲われた。それ以降、頭痛や動悸、視野の欠損などの症状が時を選ばず出るようになり、一時的に仕事も辞めた。脳外科や循環器内科、婦人科などで多くの医師に診てもらったが、原因不明と言われ続けた。医師から『精神科に行った方が話が早い』と心ない言葉を投げかけられたこともあった」

「18年8月、新古賀病院(福岡県久留米市)の折田義也先生からがんの告知を受けた。10か所目の病院だった。将来への不安よりも、原因がわかったことへのうれしさで涙が止まらなかった。折田先生の『あなたが探し続けたから僕も見つけることができた。あなたが頑張ったからですよ』との言葉に、諦めなければ奇跡って起きるんだと実感した瞬間だった」

――SNS患者会ではどのような取り組みをしているのか。

「希少がんは患者も診療経験のある医師も少なく、情報が不足している。理解されることで救われた実体験から、私の経験を通じて少しでも病気のことを知ってもらおうと、褐色細胞腫と診断されてすぐに実名で闘病経験を発信し始めた。より多くの人に情報を届けたいとの思いから、20年12月にアカウント名に病名を入れた『患者会』を設けた」

「患者やその家族からSNSを通じて相談を受けるようになり、これまで約100人とつながった。専門医を紹介したり、許可を得られた方の闘病記を掲載したりしている。『今日手術を受ける患者さんがいます』と発信して、集まった応援メッセージを届けることもある」

参照元:Yahoo!ニュース