「2時間待ちは普通」「ひとり2000円超え」なのに大盛況!「丸亀製麺」運営企業が手掛ける「コナズ珈琲」人気爆発も“納得”のワケ

カフェでコーヒーを飲んでいる女性

丸亀製麺などの運営で知られるトリドールホールディングスが手がけるカフェ「コナズ珈琲」が好調だ。

「ハワイアン」をテーマにしたカフェで、パンケーキやロコモコなどの商品がウリである。

2025年3月期第3四半期の決算を見ると、売り上げは前年同期比で20億2000万円増。

営業利益も4億2400万円増となり、業態として増収増益を達成している。

トリドールは丸亀製麺以外にも、国内で様々な外食チェーンを運営しているが、その中でもずば抜けて収益がいいのだ。

さらに、2024年12月のトリドールグループ国内店舗売上ランキング上位20店舗のうち、半数を占める10店舗がコナズ珈琲店であり、その収益性の高さが顕著である。

同店は、丸亀製麺に次ぐトリドールの柱になるかもしれない。

いったい、コナズ珈琲の何がそこまで人を惹きつけるのか。

そして、今後の事業拡大のポテンシャルはあるのか。現地を訪れて考えた。

さっそく私は、近所にあるコナズ珈琲店に足を運ぶことにした。

ザ・住宅街な風景を横目に歩いていくと、突然Y字路にオシャレな店が。

店の周りには南国チックな植物が植えられ、店舗自体もカラフルで遊園地みたい。

植栽の中を歩いていくと、やけに店舗の外に人がたくさんいる。

暖かい日だったから、テラス席でカフェを楽しんでいるのか?と思いきや、そうではなかった。

なんと、全員待っているお客さんだった。店内で受付をすると、なんと24組待ち。

店の外まで人がいっぱいなはずだ。

店員さんに「どれぐらい待ちますかね?」と戦々恐々聞くと、「当店、時間制限がございませんのでなんとも言えないのですが、だいたい1時間半ぐらいかと……」とめちゃくちゃ申し訳なさそうに言われた。

なんと、時間制限がないのだ。

仕方ない。1時間半待つことにした。

とはいえ、その時間ずっと店内で待つ必要はない。

LINEと連携した待ち時間システムを取り入れているので、外で待つことも可能である。

結局私は待ち時間を近くにあったマクドナルドで過ごした。

これから喫茶店に行くのに……。

ほぼ1時間半後。

ようやく私の順番が来た。

店内に案内される。

こうなると「わざわざ感」が出て、店にありがたみが出る。

「ハワイアン」をテーマにした店内にはハワイの雑貨やサーフボードが置かれ、まるでハワイ好きの人が経営する個人経営の喫茶店のようだ。

この内装のこだわりも魅力の一つだろう。

客席をみると、ほぼ9割以上が女性。

しかも2名以上のグループ利用が多い。

ひとり、しかも男性1人客はまったくおらず、若干の場違い感。

案内された席はゆったり座れる本格的ないすである。

他の席もいすにはこだわっているようで「ゆったりしてくださいね」感を感じる。

コナズ珈琲の名物はなんといっても「パンケーキ」。

ハワイ名物だが、ここのウリはその見た目のインパクトにある。

人生ではじめて見る生クリームの量である。

こちらはストロベリー&バナナホイップパンケーキ。

コナズ珈琲の全メニューの中で販売数No.1だという。

SNS映えをする見た目で、Instagramなどとの相性が抜群なのも人気の理由だろう。

これにコーヒーも注文して、いただく。

パンケーキはふわふわで、生クリームの甘さといちごの酸っぱさがマッチする。

ちなみに、パンケーキはお値段税込1749円。

チェーンカフェだと考えると、かなり攻めた価格設定だ。

コーヒーを合わせると優に2000円を超える。

ただ、周りを見るとほとんどが女性グループで、話に花を咲かせている。

それもそのはずで、先ほども書いた通り、滞在時間に制限がないからだ。

赤ちゃん連れも目立つし、ママ友が集まって長い時間話すのにはちょうどいいのだろう。

そうなれば、ある程度商品の単価が高くても頼むだろうし、グループだったらパンケーキをシェアして食べることもできる。

その意味では、商品としての価値もさることながらコナズ珈琲には「場所」としての価値もあり、それも踏まえての値段設定なのだろう、と思った。

トリドールがカフェ事業に参入するのは、業界として見れば不思議な話かもしれない。

というのも、実は日本国内の喫茶店市場はここ20年ほど、ほぼ横ばいの状態が続いているからだ。

1999年度が1.2兆円で2008年度が1.04兆円、そしてコロナ禍が明けた2023年度が1.18兆円と、だいたい1兆円あたりをうろついている状況である。

一方、データによれば1981年以降、喫茶店全体の数は減少を続けている。

おそらく小規模な個人経営店が減り、それよりも広めの商圏を持つチェーンカフェが台頭してきている、というのが現状だ。

いずれにしても横ばいの市場規模の中で顧客を食い合っている状態だ。

一般的な話だが、市場が飽和したときには新しい顧客を作るために新しい商品や趣向を持った店舗を作る必要がある。

実際、大手のコーヒーチェーンでもスターバックスがティーや抹茶を中心にした業態を少しずつ増やしたり、コメダが「おかげ庵」という和風喫茶を増やしたりして、少しずつ従来の「コーヒーチェーン」ではないカフェが生まれつつある。

そんな中、後発のコナズ珈琲が目を付けたのは「ハワイアン」という価値だった。

トリドールホールディングスの創業者・代表取締役社長である粟田貴也氏は、丸亀製麺の出店視察のためにハワイへ訪れたとき、現地のコーヒーショップに感銘を受けたという。

その感動を日本でも、ということでのハワイアンカフェの出店だったが、それが既存のコーヒーチェーンとは一線を画するカフェの展開を進めることになった。

とはいえ、そのように新しいカフェのスタイルを見つけても、それに対応する需要がなければ店は成り立たない。

もちろん、昔から「ハワイ好き」は日本で多いが、それだけで全国チェーンになるほどの数もいるわけではない。

では、コナズ珈琲の躍進を支えるのはどのような需要なのか。

その一つが「女子会」需要だと、店舗を訪れて感じた。

というより、店舗空間の作り方やメニュー、コンセプト、出店立地などすべてが「女子会(とくにママ友会)」に「選択と集中」されているように感じたのだ。

先ほども述べた通り、店内には特に女性グループが多く、話に花を咲かせている人が多い。

テーブルもいすも広いし、何より滞在時間は無制限である。

それに、店内にはハワイアン・ミュージックがかかっているのだが、この音量が他の飲食店よりも少し大きい。

だから、声のボリュームがある程度大きくても気にならない(あえて不便な場所にばかり出店している…売り上げが急増するハワイアンカフェ「コナズ珈琲」の逆張り戦略)。

いい意味での「ガヤガヤ感」があって、女子会にもばっちりなのだ。

また、今回はパンケーキとコーヒーを頼んだが、同店は食事メニューも充実している。

ハワイの食事としてお馴染みのロコモコやポキ丼など、さまざま。

グループで来て、これらの食事をシェアしながら女子会をしているテーブルも多かった。

また、立地戦略もうまい。

特に関東圏に絞ってみると、16号線沿線の街に多くの店舗がある。

16号線沿線といえば、0〜14歳の流入率が高く、ファミリー層が日本で最も住み始めているエリア。

2023年の住民基本台帳人口移動報告によれば、0〜14歳の人口流入トップはさいたま市、町田市、茅ヶ崎市、つくば市と続くが、このうち町田市を除く3つの市にはコナズ珈琲がある。

小さな子どもを持つママ友会需要などにはもってこいである(また、子どもが泣いてしまっても、店内がにぎやかだからそこまで目立たない、というのも良いのかもしれない)。

それ以外にも成城や新百合ヶ丘など、ファミリー層の多い立地を慎重に選択して出店していることも、その客層選択に大きく貢献しているだろう。

女子会が及ぼす経済効果はかなり大きいともいわれている。

古いデータだが、2013年の調査ではその経済規模は約3兆7000億円にも及んでいる(共立総合研究所の調査による)。

現在の数値はわからないが、その経済的価値には無視できないものがあるのは確かだ。

さらに現在ではコロナ禍が収束して外食需要が戻っており、複数人での食事をする機会も増えているから、さらにそのニーズは増大しているだろう。

コナズ珈琲はそこに目を付け、着実な成長を遂げているのではないか。

最近では、ファミレスも90分制や120分制……というように、利用時間の制限を設けることが増えてきた。

チェーンのカフェでも「〇時〇分まで利用可能」といったカードが配られることが珍しくない。

1品あたりの単価がそれほど高くない業態においては、回転率を上げることが重要だからである。

いわば、基本的にカフェやファミレスは「薄利多売」モデルである。

しかし、コナズ珈琲はそれとは正反対のモデルを取っている。

いわば「高利少売」だ。

女子会需要にフォーカスを当てて店に特別感を持たせ、逆に長居してもらうことで客単価を上げてこの欠点を補う。

しかも、待ち時間が多いことは「それでもわざわざコナズ珈琲に行きたい人」を作り、むしろ店の特別感を高め、客に一体感を持たせる。

それに、現在ではほとんどが女性グループだから、店で見ている限り、待ち時間があっても話しながら待っていて、さほど苦痛なようには感じられない。

びっくりするぐらい、すべての仕組みがうまく絡み合って「高利少売」モデルを作り上げている。

人口増加時代であれば「薄利多売」モデルも有効ではあっただろう。

しかし、人口減少が続き、必然的に買い手が強い市場の時代には、この「高利小売」モデルが強くなっていくのは明らかである。

同店は2028年度までに100店舗を目指す。

店舗の出店ペースは慎重で控えめだが、それもこの「高利少売」モデルがうまく作動するような立地を見定めているからだろう。

その点で、コナズ珈琲の着実な快進撃は続いていくと思われるのである。

参照元:Yahoo!ニュース