「生活費は月4万円」「川でカラダを洗って…」43歳で大企業退職 “魔改造”した軽トラで車中泊する“氷河期世代の男性”(48)が見つけた、新しい幸せとは

40〜50代の中年期に、仕事や家族、自分の将来について思い悩む現象「ミッドライフ・クライシス」。
現在48歳のアジアンさんも、この現象に直面したひとりだ。
自分の人生の先行きに不安を感じたアジアンさんは、一部上場企業を43歳で退職。
現在は車中泊をしながら“放浪生活”を送っている。
自身のYouTubeチャンネル「アジアンビーチチャンネル」では、日常生活や旅の様子を発信している。
一部上場企業を辞めたアジアンさんは、なぜ車中泊をすることになったのか。
車中泊や旅を通して、どのように価値観が変化したのか。話を聞いた。
――会社を辞められてからはどういった生活を?
アジアン:最初の2年間はアパートを引き払って、沖縄をフラフラしていたんです。宿代をケチるためにゲストハウスに住み込みで働いていました。1日4時間くらい働くと宿代が無料になるんです。他の空いている時間も何かしらのアルバイトをしながら生活していました。
でもなんとなく、拠点がないのは厳しいなと思うようになって。それで、軽トラの荷台に小屋を建てれば移動式の拠点ができるのではないか、と思いついたんです。
――軽トラを改造して“車中泊”をしようと思ったわけですね。
アジアン:メーカーで働いているときに、建築図面をみたりする機会もあったんです。だからその記憶を頼りに、自分で図面を引いてみて、業者さんを回って、こういう小屋を作ってみませんかと営業をかけて、45歳のときに作りました。
自慢ではないですけど、45歳なりの知恵の詰まった理想的なものができたと思います。例えば、外壁はこの業者が得意だとか、断熱材を入れたりとか、太陽光パネルを置いたりとか、自分で思いついたアイディアを実現させるための知恵が働きましたね。
もし、ワーホリに行く前の28歳のときに思いついていたら、28歳なりの小屋しかできなかった。
――住民票や税金はどうしているんですか。
アジアン:国の規定を完全に守っています。住民票は実家に置いていて、税金はきちんと払っていますし、郵便物もちゃんと受け取っています。
――YouTubeを見ていると河原での軽トラ生活はかなりキツそうに見えますが……。
アジアン:かなりキツいですよ。河原で車中泊をしようと思ったのは、やっぱり洗濯とか体を洗ったりするのが便利だからですね。一時期、公園で洗濯している時期もあったんです。そのときはまだ河原で車中泊してなくて、各地を転々としていたので。
でも、公園の水道で洗濯している自分を客観的に見たら、怪しい人にしか見えなくて、まずいぞと思って。それで河原で生活するようになりました。
――河原だと怪しまれない?
アジアン:河原だとキャンプに見えるじゃないですか。でもそう考えている時点で、まだ人の目線を気にしてしまっている自分がいるということですよね。
――1日の生活費ってどれくらいなんですか。
アジアン:月に4万円から5万円の間で生活できています。1日の生活費は2000円いかないくらいですね。でも実際、1日に1000円使わないこともかなり多いので、頑張れば月3万円とかでも生活できちゃうんですよね。ビールをどれだけ飲むかによって増減が決まってくる感じですね。
――今はどうやって収入を得ているのでしょうか。
アジアン:YouTubeをやっているんですけど、登録者数が6000人くらいで動画の収益だけでは足りなくて。収入は2万円から3万円くらいなんです。だから生活費を補うために何かしらの単発バイトをして凌いでいます。
毎年冬にタイに行っていて、タイの動画をアップすると再生数が増えて収入も増えるんですけど、今度は宿代がかかるので、赤字には変わらないんです。日本でもタイでもどっこいどっこいの生活を送ってますね。
――YouTubeはいつ頃からはじめられたのですか。
アジアン:最初に始めたのは、2020年ですね。カンボジアに行ったときの動画から投稿を始めました。元々YouTubeを見るのが好きで、自分でも動画を作ってみたいという憧れもあったので、1本目の動画を作ってみたんです。そしたら、意外と動画づくりが面白くて。
会社を辞めて時間があったので、やることがなくて迷子になるくらいなら忙しくしようと思って、そのままYouTubeを本格的に始めました。
今6年目ですけど、最初はここまで続けるつもりはなかったんです。でも見てくださる人もいるので、義務感に追われてというと変ですけど、頑張ってやれています。
収入がまだ全然追いついていないですけど、お金が目的じゃないから逆に続けられているっていうのはありますね。収益目的だったらとっくにやめていると思います。面白いからやっている。
――先ほど「冬にタイに行っている」と言ってましたが、それはなぜですか?
アジアン:僕は暖かいところが好きなので、タイに越冬しに行くんです。河原での生活って、12月頃に限界が来るんですよ。軽トラの窓ガラスが凍ってきて、室内温度もどんどん低くなって、凍死しちゃうんじゃないかって思えてくる。
「越冬するなら沖縄でいいんじゃないの?」って思うかもしれないですけど、僕からしたら沖縄も寒いんです。日本だと、どこにいても冬は暖かくない。
――冬を越すために、暖かいタイに行っていると。
アジアン:お金がなくても、暖かい国にいるだけで、贅沢な気分になれるんです。それにタイは「微笑みの国」というだけあって、人が温かいんですよね。みんな人当たりが良くて、目が合うとにっこり笑ってくれる。
あとは、滞在費が安いから、という理由もあります。特に「カオサン通り」の周辺は、安く泊まれる宿がたくさんあるんです。僕はいつも1泊200バーツ(約900円)の宿に泊まっています。でもなかには、伝説の100バーツ宿というのもあって、そこにも何回か泊まったことがありますね。
カオサン通りは外国人観光客もたくさんいて、街に活気があるんですよね。滞在しているだけで自然と元気になるので、タイに行ったときはカオサンを拠点にすることが多いです。
――ご自身にとって、タイは居心地がいい場所なんですね。
アジアン:そうですね。去年くらいに、タイを旅していて泣いちゃったこともありました。宿の近くにあった「シーク教」という宗教の寺院で朝食のカレーを無料で振る舞っていたので、初めてそこに行ってご飯を食べたんです。そのとき手持ちの現金がほとんどなくて、本当にお腹が減っていたので。
そしたらシーク教の施設の方が「初めてか?」と声をかけてくださって。「初めてです! 美味しいです!」と返事したら「明日も来いよ」と言ってくださったんです。そのとき、旅の孤独感と空腹感で参っていたのもあって、うれしくて思わず感情的になってしまいました。あのときほどの感動はないですね。
――車中泊や国内外での旅を通して、価値観などに変化はありましたか?
アジアン:「幸せ」の定義が変わりましたね。これまでは「お金があるかどうか」で幸せを判断していたけど、今は「自分が幸せに思うかどうか」を大事にしています。今の僕は、誰かの歩いた道をなぞっているわけではないので、自分で全部決めて、自分の心に忠実に従って行動している。それに幸せを感じますね。
たまにYouTubeの視聴者さんから「幸せですか?」と聞かれたりするんですけど、自分の思うように生きているので、「不幸せ」とは答えないで「幸せです」と答えてますね。
――今のアジアンさんは、会社を辞めるときに思い描いた理想の生活に近づけていますか。
アジアン:そういうわけでもないんですけど、少なくとも毎日楽しくは生きています。旅をするなかで、楽しく暮らすための“コツ”みたいなものを掴んだので。
40歳を超えてから自分の未来が見えて、しかもその未来が幸せそうではなかったから会社を辞めて。一旦レールから外れたんですけど、僕はそれでいいかなと思っています。将来に対する不安感はあったとしても、今は絶望感がない。サラリーマンをやっているときは、絶望を感じていたので。
もし今後、自分の生活が「不幸せ」だと思うようになったら、また元のレールに戻ればいいだけの話なので。だから今は、多少やせ我慢しながら楽しく暮らして、その先に理想の生活があればいいなと思っています。
参照元:Yahoo!ニュース