中国と米国、造船を巡る長期紛争に突入へ

中国とアメリカの国旗を撮影した画像

米中関係の新たな火種が浮上している。

ロイターが確認した草案によると、トランプ米大統領は中国製または中国籍の船舶が米国の港に接岸する場合に特別な入港料を課す大統領令を準備しており、同盟国にも追随するよう働きかける方針だ。

しかしながら、造船業で首位となっている中国を米国が打ち破るには数年の歳月と、多額の投資が必要となる。

そうなれば、造船を巡る紛争が長期化することは避けられない。

20年を超える中国政府の惜しみない支援と産業政策により、中国は造船業で誰もが認める世界首位の座を築いた。

米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)によると、1999年に5%しかなかった中国の造船の世界シェアは、2024年には半分超となった。

米通商代表部(USTR)の報告書によると、24年1月時点で世界の商業船舶の5分の1弱を中国が所有していた。

USTRは今年に入り、中国が建造した船舶に対して入港1回当たり最高で150万ドルを徴収するなどの国内産業救済措置を提案した。

かつては造船業で圧倒的な強さを誇った米国は、現在は世界シェアを0.1%まで落としている。

公式データによると、中国政府の支援を受けた巨大企業、中国船舶工業集団(CSSC)は24年の世界新規受注の74%を獲得し、29年まで受注が埋まっている。

米JPモルガンのアナリストらは、USTRの提案を実行した場合には船舶運航費用を年間520億ドル押し上げ、中国遠洋海運集団(COSCO)やデンマークのマースクのようなコンテナ船運航大手の経営を圧迫する可能性があると指摘する。

米政府の動機は商業的かつ戦略的だ。

しかしながら、世界ではモノの輸送の80%超を海運が占めており、造船企業の数が減ることは米国の貿易業者の選択肢も、価格交渉力も低下することになる。

CSSCは中国人民解放軍海軍の航空母艦の開発で重要な役割を果たしているものの、中国の支配力を緩めることはおろか、米国の造船業を再建するには数十年もの歳月と数十億ドルものコストを要するだろう。

USTRの試算によると、中国政府の造船分野への支援額は8年間で計1320億ドルに上る。

一方、中国は米国の港への依存度を下げ、船舶の航路を変更するため中国の広域経済圏構想「一帯一路」の港への投資を確実に増やすだろう。

海洋覇権をめぐる戦いは火ぶたが切って落とされたばかりだ。

参照元:REUTERS(ロイター)