「引っ越し難民」続々、「2024年問題」で混雑に拍車 予約は満杯・料金は昨年の2~3割高に

引っ越し業者をイメージした画像

新年度を前に、転勤や進学などに伴う転居を希望日にできない「引っ越し難民」が増えている。

国は時期の分散化を促すが、物流の「2024年問題」もあって混雑に拍車がかかり、料金の高騰もみられる。

識者は「転勤に伴う転居は日程を柔軟に選択できる環境整備が必要だ」と指摘する。

一人暮らしの東京都北区の自宅から練馬区へ引っ越しを検討していた女性会社員34)は、3月22日の土曜を希望日として引っ越し会社に見積もりを依頼した結果、提示された45万円という金額に目をむいた。

高額料金を避けるため、転居日を3月上旬の平日に変更したところ、14万円に抑えられたという。

ただ、日程を早めたことで、3月中旬に単身赴任先から戻ってくる公務員の夫に引っ越し作業を手伝ってもらうことはできず、荷造りなどの準備も急ピッチで進める羽目になった。

女性は「夫の転勤がこの時期でなければここまでバタバタしなかった。異動時期をずらす工夫をしてくれたら……」と話した。

「3月22日はすでに満杯です」「4月下旬はまだ余裕があります」

3月6日、府中市にある「KIZUNA引越センター」のコールセンターには、依頼電話が殺到していた。

同センターの遠藤充営業部長によると、資材費や燃料費が上がった影響もあり、引っ越し代は昨年より20~30%高いという。

遠藤部長は「3月下旬の希望日時に引っ越せないため、今年は3月上旬などに元の住居から荷物を出し、一時預かりするケースが昨年までより多い」と語る。

引っ越し料金比較サイト「引越し侍」を運営するエイチームライフデザイン(名古屋市)によると、昨年3月の引っ越し代(2人以上の世帯)の平均は約23万円で、新型コロナ禍だった21年から約5割も値上がりしたという。

今年3月は25万円を超える見通しだ。

移転者サポート事業を行う「リベロ」(東京)は19年から、引っ越し会社が受注した申し込み内容を他社と共有するサービスを開始。

ある会社が顧客の希望日に対応できなくても、空いている別の会社が代わりに受注できる。

全国の中小企業を中心に154社が加盟しており、繁忙期でも、申し込みをほとんど断らずにすんでいるという。

国は引っ越し希望日が集中する事態の是正に向けて模索している。

引っ越し難民は17年頃から社会問題化した。

高齢化が進む運送業界の人手不足が主な要因で、年間の引っ越し件数の約3割が集中する3~4月にかけて、思い通りに引っ越し会社を見つけられない転居希望者が増えたとみられる。

「2024年問題」を受け、2月までに時間外労働が上限近くへ達した運転手は3月末まで長時間の稼働はできず、国土交通省の担当者は「例年より(難民は)増えた」とみる。

国交省は先月、3~4月に限り、職員は人事異動の発令から2週間以内に転居すればよいとルールを改めた。

これまでは単身者で8日以内、家族帯同は11日以内だった。

担当者は「所管官庁として積極的に分散を進める。ほかの省庁や民間企業へ波及してほしい」と期待する。

流通経済大の矢野裕児教授(物流論)は「人手不足と残業規制で、以前のように引っ越し会社が1日で3~4戸を回るのは難しい」と指摘した上で、「繁忙期を外せば費用を相当抑えられる。企業と行政が足並みをそろえ、転勤の前後1か月間で柔軟に転居日を選択できる環境を整備していくべきだ」と話している。

参照元:Yahoo!ニュース