松橋事件、検察の注意義務違反を認定 国に賠償命令 熊本地裁

裁判所の外観を撮影した画像

1985年に熊本県内で男性が殺害された「松橋(まつばせ)事件」をめぐり、再審無罪が確定した故・宮田浩喜さんが、捜査や証拠の取り扱いが違法だったとして国と県に約8500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が14日、熊本地裁であった。

品川英基裁判長は、確定審の公判における検察官の注意義務違反を認め、国に約2380万円の賠償を命じた一方、県に対する請求は棄却した。

事件は同年1月に、同県松橋町(現・宇城市)で発生。

宮田さんは捜査段階で犯行を「自白」したが、一審途中から否認。

無罪を訴えて最高裁まで争ったものの有罪となり、約10年間服役した。

宮田さんの弁護団は97年、検察側が開示した証拠の中から、宮田さんが「凶器の小刀に巻き付け、犯行後に燃やした」と供述していたシャツの布を発見。

他の新証拠とともに再審請求し、2019年3月、熊本地裁で無罪が確定した。

国と県に対して損害賠償を求めて提訴したのは20年9月。

訴状では、起訴後の捜査で見つかったシャツの布や、その布に血液が付着していないとする鑑定書を検察が裁判所に提出しなかったことを「証拠隠し」と指摘したほか、県警が逮捕前に連日、長時間の取り調べを続けて自白させたこととあわせ違法だと主張。

「無実の罪で長期間の服役を強いられ、その後も社会的偏見にさらされた」などとして賠償を求めた。

国はシャツの布などを証拠として裁判所に提出しなかったことは認めたが、「証拠隠し」ではなかったと主張。

県も県警による当時の取り調べについて「任意捜査としての手段・方法の相当性を欠くところはない」などと反論していた。

宮田さんは国賠訴訟の第1回口頭弁論を翌月に控えた20年10月、87歳で死去。

訴訟は相続人が承継して続けられ、24年12月の第6回弁論で結審していた。

参照元:Yahoo!ニュース