停戦案合意、米のシナリオ通り 支援再開優先のウクライナに選択肢なく丸のみに

ロシアとウクライナの国旗を撮影した画像

ロシアのウクライナ侵略を巡り、30日間の停戦実現を目指すウクライナとの合意は、米国にとって思い通りの展開となった。

米国の支援を失っていたウクライナは停戦条件に関する持論を棚上げし、早期停戦を何よりも優先するトランプ米大統領と足並みをそろえて難局を乗り切ろうとしている。

「ウクライナ代表団は今日、非常に明確なことを表明した。トランプ大統領の和平構想を共有しているということだ」

休憩を挟んで8時間以上続いた協議の後、米国のマイク・ウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官は満足そうに記者団に語った。

2月末に首脳会談が決裂して以降、両国高官が初めて顔を合わせた協議は関係修復を印象づけた。

共同声明をまとめられたことが何よりの証しだ。

和平仲介を狙うトランプ氏は、ロシアのプーチン大統領との直接対話を通じた停戦実現を目指していた。

構想の中では、ロシアへの譲歩を拒むウクライナが「障害」と映っており、こうした不満が2月末の首脳会談で爆発した。

自身の構想に従わせるため、軍事支援や情報共有の停止措置に踏み切った。

ウクライナが従来の姿勢を転換し、米国が主張する全面的な停戦案を丸のみしたのは、米国にとってシナリオ通りだった。

トランプ政権発足後、初めて米国とウクライナがそろって停戦を主張する構図ができ上がり、交渉は新たな展開を迎えることになる。

米国は週内にも停戦案について露側と交渉する予定で、ルビオ国務長官は「ボールはロシア側にある」と早速ロシアをけん制した。

一方、兵力・弾薬が不足するウクライナは、米国の支援を失ったまま戦闘を続けるのが難しい。

米国の提案に同意する以外の選択肢はなかったのが実情だ。

ウクライナはロシアが停戦合意を破って再び侵略するのを懸念し、米欧から「安全の保証」を得ることが停戦の前提条件だと繰り返し訴えてきた。

ロシアによる占領の固定化につながりかねないとして「戦闘の凍結」にも反対してきたが、今回は主張を封印した。

ウクライナはトランプ政権との関係を好転させ、米国の支援再開を引き出す成果を優先させた形だ。

今後の協議でロシアが停戦案を拒めば、トランプ氏の批判の矛先がプーチン氏に向き、ウクライナに有利な状況が生まれる可能性があると踏んでいる。

しかし、戦況が有利なロシアが即時停戦に応じるメリットは小さい。

トランプ氏がロシアから妥協を引き出すための「カード」として、ウクライナ大統領選の実施が浮上している。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の退任はロシアが求める要求の一つだ。

11日の共同声明には盛り込まれていないが、意見が交わされた可能性がある。

領土問題やロシアの再侵略を防ぐためにウクライナが主張する「安全の保証」に関して合意を見いだすのは容易でない。

米国がロシアの要求をのむ展開になれば、ウクライナは一段と譲歩を強いられる恐れがある。

米国とウクライナの高官協議では、両政府の関係修復が最大の成果となった。

2月末に両国の首脳会談は決裂したが、トランプ米大統領が求める早期停戦はウクライナ抜きに実現できない。

ウクライナも米国の軍事支援や機密情報の共有を止められており、双方が歩み寄る形となった。

事前の報道では米国がウクライナに強く出る展開も予想されたが、共同声明には軍事支援の再開などが盛り込まれ、一定程度譲歩する姿勢が見られた。

一方、ウクライナが米国に関与するよう求めてきた「安全の保証」については具体的な言及がなかった。

両国関係の修復を優先し、ロシアに圧力をかけるという現実的なアプローチを選択したとみられる。

今後は停戦の意思をロシアが問われることになるが、停戦交渉は簡単にはまとまらないだろう。

戦況が有利なロシアは停戦を急いでおらず、譲歩する動機に乏しいためだ。

停戦受け入れにあたっては、最大限の要求をしてくる可能性が高い。

停戦交渉では、米国がロシアの要求をどの程度のむかが焦点となるが、ウクライナとの関係が再び悪化すれば停戦の実現は困難になる。

米国とウクライナは、今こそ恒久的な平和に向けたプロセスを開始すべき時だとの認識で一致した。

ウクライナ代表団は、同国の国民がトランプ大統領、米国議会、米国民に対し、強い感謝の意を持っていると強調した。

ウクライナは、米国が提案した即時かつ暫定的な30日間の停戦を受け入れる用意があると表明した。

この停戦は当事者の合意で延長でき、ロシアが受け入れ、同時に実施することが条件となる。

米国は、ロシアが相互主義の精神を示すことが和平実現の鍵であると露側に伝える。

米国は直ちにウクライナへの機密情報共有の一時停止を解除し、軍事支援を再開する。

両代表団はまた、和平プロセスの一環として、特に停戦期間中に捕虜の交換、拘束された民間人の解放、強制的に移送されたウクライナの子供たちの帰還といった人道救援活動が行われる重要性についても議論した。

両代表団は交渉チームを指名し、ウクライナに長期的な安全保障を提供する永続的な平和に向け、交渉を直ちに開始することで合意した。

米国は、これらの具体的な提案について露側と協議すると約束した。

ウクライナ代表団は、欧州の友好国が和平プロセスに関与することを強調した。

米国とウクライナの大統領は、ウクライナの経済を拡大し、長期的な繁栄と安全を保証するために、ウクライナの鉱物資源に関する包括協定をできる限り早く締結することで合意した。

参照元:Yahoo!ニュース