制服や体操服の名札「やめました」 全国の中学校に広がる動き 「刺繍なければ次の人にもわたりやすい」防犯以外にもメリット

制服の名札や、ジャージ(体操服)に縫い付けられた名入れ刺繍について、生徒のプライバシー保護や防犯の観点から取りやめる学校が現れている。
昨今では、保護者などから要請を受けて対応する学校もあるようだ。
学校側は「生徒の名前を覚えやすい」「忘れ物の心配がない」などの理由もあって名前を表示させてきたようだが、それをやめることは保護者にとって経済的なメリットも大きい。
2年前から登下校時の名札着用と、ジャージの名入れ刺繍をやめた中学校は、特に大きなデメリットはないと答える。
着なくなった制服やジャージのリサイクルも進むという。
茨城県日立市出身の20代男性は、かつて通っていた公立中学校の生徒がいまだに「名前入りのジャージで登下校している」と話す。
「犯罪者に名前を覚えられるリスクがあり、危険だと感じました」(男性)
2021年には佐賀県で、投稿中の女子児童の写真を撮影し、ネット掲示板に投稿される事件が起きたことから、県警が学校外での名札やゼッケンの見直しを教育委員会に求めた。
写真の児童は顔だけでなく、名札から名前と学校名など個人が特定できたという。
日立市教育委員会は、弁護士ドットコムニュースの取材に、市内の小中学校において生徒の制服の名札や、ジャージの名札・名入れ刺繍を入れることについては、学校現場の裁量に任せていると回答した。
ただ、学校では、生徒らに「制服の名札などについて登下校時などはつけなくても良いと指導している」という。
ジャージの名前はフルネームか苗字だけの対応もあるそうだ。
文部科学省の担当者も、制服やジャージの名前に関して、防犯やプライバシーの観点から文科省から通知を出したことはないと回答した。
最終的には学校が決めるものだとしている。
一方で、文科省からは、制服全般に関して、費用面で保護者に過重な負担にならないように求める通知が2018年に出されている。
ここ2年のうちに名札の運用を大きく変更したのは、北海道の富良野市立富良野東中学校だ。
同校の清水貴之主幹教諭によると、2023年度から、制服を学ランから男女ともブレザーに切り替えた。
その際、制服の上着に名札を縫い付けることもやめて、クリップ式を導入。
登下校中には名札を外し、校内では胸に付けるようにした。
ブレザーの導入は、女子もスラックスを選択できるようにすることなど、LGBTQへの配慮の観点からだったという。
2024年度からは、ジャージに名前の刺繍を入れることもやめた。
「ジャージの取扱店から、刺繍する業者がいなくなり、別の業者を探すと割高になると伝えられました。全国的に需要も減って刺繍できる業者も少なくなったようです。登下校中に名前がわかるのをふせぐためにも、保護者の負担を軽くするためにも、それならいっそ名前の刺繍をやめてしまうことにしたんです」
こうしたことで、特に大きな困り事が出ることもなかったという。
「あえて言えば、運動会シーズンには、名前の刺繍があれば誰の忘れ物かすぐわかりますが、ジャージの内側のタグに名前を書いているので問題はありません。
先生側の事情として、生徒の顔と名前を一致させるのに苦労はありますが、これも接するうちに覚えられますので」
富良野市では、卒業するなどして不要になった制服やジャージを回収し、必要な人に譲渡する活動が実施されている(「ふらの制服バンク」)。
「刺繍が入っていないことで、制服もジャージも循環しやすくなります」
このような「制服バンク」は全国各地の地域でもおこなわれている。
なお、日立市出身の男性から「名入りのジャージで登下校している」と指摘のあった公立中学校は取材に対して、生徒に「特に何も指示していない」と答えた。
ジャージに名前を入れることのメリットを尋ねたところ、これも「特にないと思う」と回答した。
参照元:Yahoo!ニュース