「今あるインフラの面倒はもはや見切れない」八潮市で起きた陥没事故を受けて“土木学会のドン”が緊急提言

インフラの老朽化を懸念している専門家をイメージした画像

今年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故では、トラック運転手の男性が巻き添えになった。

日本全国で進むインフラの老朽化に対してどのように対処すべきなのか。

土木工学者の家田仁・政策研究大学院大学特別教授が「 文藝春秋 」4月号に緊急提言を寄稿した。

家田氏は、事故を受けて国土交通省が設置した有識者会議「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」の委員長に就任。

これまでも日本の土木行政に深く関わってきた。

家田氏がまず指摘するのは、かつてのようにスクラップ&ビルドでインフラを更新していくことの限界だ。

八潮市の事故を契機に国民はインフラの維持管理に対する責任意識を持ってほしいと述べた。

「今ある全てのインフラの面倒を見ることは人口減少の中、合理的でも現実的でもない以上、使い方を工夫したり、優先順位をつけて重点化をすることが必要です。それができるのは、オーナーである国民をおいてほかにありません」

日本のインフラの現状はどうなっているのか。

実は、今後多くのインフラが、何らかのメンテナンスが必要となる目安、「50年」を迎えると警鐘を鳴らす。

「50年を迎えるインフラは、下水道であれば2020年時点で全体の5%だったのが、2030年には16%、2040年には35%にもなります」

より顕著なのは道路橋だ。

「築50年を迎える道路橋は2020年に全体の30%だったのですが、2030年には55%、2040年には75%に達します」

だが、これらのインフラを維持する財源は全く足りていないと家田氏は指摘する。

「市町村の財源における土木費は1993年度の11.5兆円をピークに、直近の5年は6.5兆円前後とピーク時の約6割に落ち込んでいます」

もちろん人材も全く足りていない。

「道路や橋、上下水道の約7割は市区町村が管理しています。これらの市区町村のうち、25%の437団体では技術系職員が全くいません。約5割の827団体では5人以下の技術系職員だけでインフラの仕事にあたっています。このような恐ろしいほどの少人数で、インフラの点検や補修の発注、そのための予算要求などの業務を行っているのが、いまの日本の現状なのです」

では、どうすればいいのか。

家田氏はかねてより提唱してきた“インフラ群マネジメント”構想を語り、国民にインフラの維持管理を自分ごととして考えてほしいと述べた。

参照元:Yahoo!ニュース