「財務省解体デモ」が全国で拡大、石破総理も言及 異様な拡散に主催者も困惑「逆にちょっと騒がれすぎで違和感がある」

財務省の外観を撮影した写真

先月21日、財務省前で大きな声が響き続けた。

「財務省分割!財務省解体!」「消費税をぶっ壊す!財政均衡主義をぶっ壊す!」。

訴えたのは減税など国民負担の軽減と財務省の解体。

この“財務省解体デモ”はSNSなどを中心に徐々に拡散した。

今週、国会でも質問が飛ぶと、石破茂総理は「国民の皆様方のご不満、お怒りというものがそういう形で体現されているということは、私どもは等閑視(無視や軽視)すべきではないのであって、ご理解をいただくべく更なる努力をしていかねばならない」と答弁した。

財務省は国の予算や税金の仕組みを作り、国有財産、紙幣・貨幣の管理など、国の金を扱っている役所。

財務省がGOサインを出さなければ、各省庁が求める金が回らず、つまり国民のための金も十分に回らないとも言える。

そんな財務省に対して、SNS上では厳しい声が日増しに拡大している。

先月21日、財務省前で行われたデモをきっかけに、デモは各地に拡大。

14日には全国10カ所の財務省や財務局前で全国一斉デモも予定されている。

きっかけとなったデモを主催した、政治団体「新生民権党」代表の塚口洋佑氏は「本来であれば、もっと早くデモが起きるべきだった」という。

内容の難しさから、なかなかマイクを持って外で話すというデモという行動には不向きと思われたが、ポイントは「103万円の壁」についての議論だったという。

「去年の年末、(国民民主党)玉木さんが『103万円の壁』を178万円にすると3党合意に至ったのに、結局は反故にされ、スキャンダルも噴出した。国民の不満、活動する人の不満が沸点に至って、デモが起きたと思う。国民民主党が自公連立政権の中でキャスティングボードに入って、もう少し状況がよくなるかと思いきや、そう簡単にはいかず、これが最後の一押しでデモが始まった」。

「財務省解体」というワードそのものは、塚口氏が掲げたものではなく、前回集まった人たちも、塚口氏の指示ではなく、SNSなどの拡散によって集まった人も多いという。

「時流に乗ったという感じでは。私が一番訴えたいのは財政均衡主義を正していただきたいということ。『財務省解体』も、私は分割の方がいいと思っている。だから『解体』と言ってしまうと、なんでもいいからぶっ壊すみたいに誤解もされがちになる。ただ、やはりデモにはある程度言葉の勢いが必要になる。『解体』と『分割』と交互にコールをしても、やはり上品ぶっている感じになって、ノリはイマイチだった」。

メディアでも取り上げられ、さらにはインフルエンサーによりネット上でも拡散。

デモの規模に対しては異様とも言える速度で広まったことに、塚口氏は戸惑いすら感じるという。

「逆にちょっと騒がれすぎ。そこに関しては若干の違和感を持っているぐらい。たとえば反ワクチン運動の人たちは、かなりの人を集めたが全然報道されなかった。だけど今回の財務省前デモは、全然そこまでの人数に到達していないのに、マスメディアにも扱われた。なんだかすごい騒ぎをやった感じで、違和感もある。デモは報道され、SNSでバズったりして、それでまたデモに参加する人が出て、その声を政治が拾う。今回、意外なほど早めに拾ってくれてびっくりした」。

このようなデモに対して、財務省はどう感じていたか。

元財務官僚で自民党所属の今岡うえき氏は「物価がずっと上がっていて生活が苦しい状況の中で、何か履き口を探している中で、財務省をある意味で悪者にして、デモが起きていると見ている。私の肌感では、これまでより、財務省に対するバッシングというか批判が増えている。私が働いていたのは3年半ぐらい前になるが、その時より強くなっている」。 

ただしデモの対象になることには、思うところがある。

「デモは憲法上、保障された表現の自由で、1つの表現活動としてはありうる。ただ、政治が最後は決めているというのは言いたい。おっしゃる通り、増税であったり、予算、法律の原案を作るのは役所であり公務員だが、決定していくのは国会。今回も少数与党になって、いろいろと予算は修正された。財務省が全てを握っていればこうはならない」と、財務省ばかりが矛先になることには疑問を呈した。

また時事問題をYouTubeなどで発信する笑下村塾代表のたかまつなな氏は、財務省の中で働く人々の生の声を紹介した。

「財務省の知り合いが何人かいるので、今回の件をどう受け止めているか、話を聞いた。本当に安月給で深夜、終電まで働いて、こういうデモが聞こえてくる中で『本当に一体誰のためにやっているんだろう』という徒労感がものすごくあるとおっしゃっていた。その方がおっしゃったのは、本来政治の役割は予算をどういう風に、どこにいくら使えるか(を決めること)。だが今の政治家は、減税するとか、配るのを増やす予算増に大きく目が向いているということ。そんな中で、バランスを取ろうとしている役目を結局押し付けられるのは財務省じゃないか、と。そうすると財務省がやっぱり悪者に見える」。

塚口氏としては「別に財務省だけの問題であるとは思っていない」ものの、「経済問題に対してデモをやる時に、どこでするかとなれば、国会でやったらやったで『財務省に行け』とか言われる。なので、財務省は一番、経済政策の象徴的な場所だ。(与党の)自民党は自民党で、別にいろいろな考えを持っている議員がいる。また、あそこでデモをして中に声が届くかなというところもある」と、デモをする上での効果についても語った。

参照元∶Yahoo!ニュース